この一連の動きについて、地域工務店が施工する物件の建築性能を検査する仕事に従事する第三者機関の社員は、「戸建て分野、特に木造住宅は、2020年に本当に省エネ義務化ができるのだろうか」と懸念した上で、こう続ける。
「大手は既に自社の方向性に概ね道筋を立てており、技術的・能力的にクリアできないという話ではない。あとは実現させる経費をいかに小さくするかというコスト対応の問題だろう。しかし地域工務店、なかでも住宅性能表示を使うことが必要な長期優良住宅を建設したことがなく、そうする興味も意志もないといった工務店事業者が、今の状態のままで対応できるとは思えない」、「そういった事業者から『義務化と言っても5年後だ』との声を聞くことがあるが、告示時期、告示内容を確定させる最終的なパブリックコメントの実施、それを固めるために必要な検討期間――といった具合に工程を逆算すると、実は、そうした事業者が言う程は時間的に余裕がないことになる」。
省エネ基準適合義務化に対する地域工務店の対応として、事業規模が小規模・零細の事業者にとって障壁となるであろうと想像されるのが、義務化で必要になるとみられている一次エネルギー消費量計算という「性能規定」を、自社で扱えるかどうかだ。地域工務店はその事業規模が小規模・零細の場合、多くが「仕様規定」を使っているのが実情だからだ。
北関東で年間数棟の新築戸建てを、平成11年省エネ基準を目安に仕様規定で断熱性能を出している地域工務店の社長は仕様規定を使う理由を、「会社は家族経営で、一人で何役もこなさなければいけない。いちいち計算しなければいけない性能規定は、手間がかかる。回りの工務店仲間をみても性能規定でやっているところは聞かない」と話す。平成25年省エネ基準の活用については、「今のところ実際の物件にいつ採用するか考えていない。計算を自社でするのは負担。一連の計算をサービスでしてくれる断熱材メーカーがあるらしいと聞いたので、必要になったらそのような外部に頼むと思う」と言う。