新築戸建住宅の省エネ基準適合義務化と地域工務店

前述の3つの選択肢は、省エネ義務化に消極的もしくは反対の内容と言え、アンケート実施時点では全回答者の半数が省エネ義務化を好ましく思っていないとの傾向が示されたことになる。

JBNは、2008年設立の工務店サポートセンターをその前身とし、地域工務店が大手ハウスメーカーとの競争で生き残っていくためには、長期優良住宅を始めとする国の最新の住宅施策に地域工務店が追随していくことが必要――との立場で事業活動を行っている。このためJBNに加盟している地域工務店は、その多くが長期優良住宅の施工経験を持つなど高い技術力を備え、国の住宅施策に向ける意識も高い。

そのような地域工務店が多く参加したセミナーのアンケート調査で、省エネ義務化に反対を含む消極的意見が全体の半数に上ったということは、長期優良住宅の扱いや国の住宅政策に対する関心が低い地域工務店を集めて同様のアンケートを行った場合、省エネ基準義務化に消極的・反対の意思表示をする回答の割合は、全体の半数を超える可能性が高いと言える。

一人親方、「省エネ講習会」の情報知らず=行政・事業者の意志疎通が重要に

ある住宅検査機関の担当者は、省エネ義務化への対応力が懸念される地域工務店像として、「地元の工務店組織に属さず国の住宅施策の情報が入ってこない事業者。中でも『一人親方』として日々の仕事に追われている零細事業者は、その可能性が高い」と話す。

記事前半で紹介した「北関東で年間数棟の新築戸建てを供給」している地域工務店も同様の指摘をする。「以前、一人親方として働いている、二級建築士資格を持つ30歳代の大工に仕事を頼んだ時、話をしていたら省エネ講習会(=国土交通の補助事業として2012年度から全国で実施されている「住宅省エネルギー技術講習会」)の存在を知らなかった。おそらく工務店組織に入っていないだろう。目先の仕事をこなすことに一杯で、国の住宅施策が今どうなっているかといったことには、意識が回らないのではないか」

住宅施策の根幹を担う国土交通省では、2006年に制定した住生活基本法で政策の重点をそれまでの新築から既存へと切り替えると同時に、ホームページや団体を通じ、今後導入される住宅施策への対応力を付けてもらう準備として、補助事業活用の情報などを積極的に地域工務店に発信し続けている。既存流通市場の活性化には、耐震・省エネの両面で現行規定より性能が劣る既存住宅を改築して質を高めることが必要で、その施工には地域工務店の力が欠かせないからだ。しかし、一口に「地域工務店」といっても、省エネに関する考え方や技術力、事業規模は様々だ。

4月の平成25年省エネ基準の完全施行で一段階現実味を増すことになる、新築戸建住宅を対象とした2020年度までの省エネ義務化。その過程では行政と地域工務店の意思疎通として、行政サイドでは、事業規模や団体加入の有無に係わらず情報をタイムリーに事業者に伝える工夫が、事業者サイドでは、行政の動きに関心を持ち自社の現状や意見を率直に行政に伝える努力が、共に欠かせないと思われる。

2015年01月01日付3面から抜粋
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2018年12月25日 住宅産業新聞社 編集部

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