注目の助成金(213)補助金申請時の勘所、採択のカギは「目的の一致」

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補助金の申請にあたって最も重要な観点の一つは「補助金の掲げる目的と、申請する事業がどれだけ一致しているか」という点です。多くの企業が、自社のニーズや課題解決に重きを置いて事業計画を立てがちですが、それだけでは不十分です。事業計画の内容が補助金を設けた目的と乖離していた場合、審査でマイナスに作用してしまいます。

今回は、補助金の採択率を高めるために事業者が申請書類作成時に考慮しなければならない「勘所」について紹介します。

◇ ◇

補助金は、公的資金によって運営される制度であり、その最終的な目的は「企業の利益」ではなく、「国や自治体が掲げる社会的・政策的な目標を実現すること」にあります。補助金を通じて達成したい政策課題は、たとえば「脱炭素化」、「地域活性化」、「中小企業支援」、「デジタル化の推進」など多岐にわたります。つまり、自社のやりたいことを主張するのではなく、その取り組みがどのように政策実現に寄与するのかを明確に伝えることが、採択の可否を大きく左右するのです。

省エネ関連の補助金を申請する場合、その目的は「エネルギー使用量の削減」や「二酸化炭素排出量の抑制」といった環境負荷の低減にあります。したがって、「老朽化した設備を新調したい」という理由だけでは、目的との結びつきが希薄です。「設備を更新することでどれほどのエネルギーが削減されるのか?」といった成果を、具体的な数値とともに提示する必要があります。

たとえば、「最新の省エネ設備を導入することで、年間の電力消費量が20%減少し、CO2排出量も年間10トン削減できる見込み」といった表現が求められます。

加えて、ほとんどの補助金において「補助金の目的にどれほど合致しているか」といった審査基準が必ず盛り込まれています。
審査員は、公募要領に基づき事業計画を評価するため、まずは「申請者が補助金の目的をきちんと理解しているか?」をチェックします。事業計画の内容が「脱炭素に繋がる、社会貢献度の高い取り組み」であっても、補助金の目的が「DXによる業務効率の改善」であれば採択されません。実際、多くの不採択事例においては「補助金の目的からの乖離」が主因として挙げられており、ここを軽視するのは大きなリスクです。

さらに事業計画には、公募要領に書かれた目的だけでなく、その目的の背景にある社会的課題も念頭に置かなければなりません。

たとえば、デジタル化推進の補助金を申請する場合、単に「ソフトウェア導入による業務効率の向上」を訴えるだけでなく、「中小企業の競争力強化」や「地域経済の活性化」といった広い文脈で自社の取り組みを位置づけることで、申請内容に一層の説得力を持たせることができます。「国がなぜこの補助金を用意したのか? どのような未来を描いているのか?」を掘り下げた上で、その構想に自社がどのように貢献しうるかを示すことが求められるのです。

また、事業計画を策定する際には、冒頭や要約の部分で「本補助金の目的に対し、当社の事業は以下のように貢献します」などの一文を入れることで、審査員に対して大きなインパクトを与えることができます。多忙な審査員にとって、補助金の目的と合致していることが一目でわかる事業計画は評価しやすく、結果として採択率も高まる傾向にあります。

◇ ◇

補助金の申請において重要なのは、「自社のやりたいことを説明する」のではなく、「補助金の目的に即した形で自社の取り組みを再構成し、提案する」ことです。補助金はあくまで政策実現のためのツールであり、申請者がどれほどその実現に貢献できるかが採択の最大の判断基準となります。

この点を常に念頭に置きながら、全体を通じて目的との整合性をアピールすることが、補助金獲得の第一歩となるのです。

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2018年12月25日 住宅産業新聞社 編集部

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