【まちづくり月間特集2021】東京・中延の不燃化プロジェクトとM要除却の基準案、まちづくり支える融資と建て替えの枠組み

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関係権利者140人という再開発まちづくり事業が、東京都品川区の中延で行われた。都内で最大級の不燃化プロジェクトといえるものだ。

その現場となったのは、旧同潤会が関東大震災の復興住宅として整備した住宅などが建ち並び、9割以上が木造という木造密集地域。旧耐震構造の建築物も多く、火災や地震の発生時には住民らの身体・生命が大変危険で、もちろん避難や救出・消火活動が非常に困難となることが懸念されていたエリアだった。

敷地面積はおよそ5700平方メートル。いくつもの住宅が集まるが、一方で心強かったのが住民の防災意識の高さだ。準備組合を設立し、土地と建物は共同化して、195戸の住宅の防災井戸や備蓄倉庫、防災対策設備を備えた街区にする事業が進められることになった。

準備組合設立から5年経った2019年。地下1階、地上13階の不燃化建築の分譲マンションに建て替わった。これによりエリア全体の不燃化と延焼防止効果が生まれる。井戸や倉庫があるだけでなく、狭あい道路の解消や歩きやすい空間づくりなど環境向上も実現できた。都内では防災街区整備事業竣工事案として6例目。東京都が推進する「木密地域不燃化10年プロジェクト」を代表する最大規模の事業だった。

この一大プロジェクトを支えたのが支援機構の「まちづくり融資(短期事業資金)」だった。中延の事案のような防災街区整備事業のほか、市街地再開発やマンション建替えといったまちづくり事業を行う場合に、事業の初動期から、分譲住戸の譲渡など事業完了にいたるまで、各段階の資金ニーズに対応する融資制度。対象となる者は、個人から資本金3億円以下の事業者や組合など幅広い。建設工事費や調査設計計画費、補償費などに使える。事業見通しが安定していない権利変換の認可など初期段階から組合などの事業主体に対し、低利で融資を受けられるのが強み。融資率の上限は100%となっている。

生まれ変わった住まいが地域の顔になる。それは、新たな建物に住む人はもちろん、地域の人にとっても安心・安全と使いやすさにつながるからだろう。例えばマンションは築40年というものも増えてきたが、外壁の剥落といったものもある。住む人にとっても、付近を通る人にとっても危険な状態だ。

安全性を確保するため、建て替えが最も合理的と判断される場合には、住民合意の割合は、本来民法で定められている全員合意から区分所有者の5分の4以上で敷地売却が可能となる。建て替え時の容積率特例も受けられる。現在、その条件となるのは耐震性の不足で、Is値が0・6未満となる場合のみ。現在はまだ、外壁の剥落があってもこの条件に当てはまらない。しかしすでにマンション建替円滑化法が改正され、12月から外壁剥落や火災時の安全性に問題がある場合も認められることが決まっている。住民合意は全員合意のままだが、建て替え後の容積率特例が認められる条件として、配管設備の腐食があるもの、バリアフリー性能が確保されていないものも加わる。

これら(1)外壁剥落(2)火災安全性(3)配管設備腐食(4)バリアフリー――の4項目の具体的な要件、つまり要除却認定基準をどのようなものにするか、現在、国土交通省が設置した検討会で、有識者などを交えて議論されている。大まかな方向性は打ち出されており、(1)は、各住戸の壁など定められた箇所をすべて調査し、ひび割れなどの数から判断する。(2)は、建築基準法の防火・避難規定に不適合なものなどとする。(1)、(2)に当てはまれば住民合意は5分の4で成立し、建て替え後容積率特例の対象となる。容積率特例のみではあるが、(3)はスラブ下配管方式の排水管(上水やガス管は対象外)で2ヵ所以上で漏水があるもの、(4)は建物の出入口から居室や住戸に至る全経路で移動等円滑化経路の基準に適合していないものーーなどとする方針が示されている。

これらの条件を満たしているからといって合意形成は決して容易ではない。しかし多くの長期経過物件が日本全国に存在し、早急な対応が求められている。そのための融資や建て替え制度の整備が進んでいる。

2021年06月03日付11面に掲載
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