
補助金申請において、事業の内容がいかに魅力的で補助金の目的とも合致しているとしても、実行の見通しが甘かったり、体制や資金の裏付けが弱かったりすると、審査員に「絵に描いた餅」と判断され、不採択とされる恐れがあります。そのため、事業計画書では、事業計画の実現可能性をいかに高く見せるかが極めて重要なポイントとなります。
今回も補助金の採択率を高めるために事業者が申請書類作成時に考慮しなければならない「勘所」について紹介します。
◇ ◇
まず、実現可能性を示す上で基本となるのが、「体制」「スケジュール」「資金」「技術・ノウハウ」といった4つの柱です。これらが明確かつ整合性のある形で記載されていれば、審査員にとっても「この会社であれば確かに実現できそうだ」と納得してもらいやすくなります。
たとえば、「体制」の部分では、プロジェクトを担当する責任者の名前、役職、経歴、実績、チーム編成や外部パートナーとの連携体制などを具体的に記載します。「補助事業に関する業務は、製造部部長であり過去に新製品開発を成功させた実績のある『●●』が責任者を務め、社内の製造・営業・経理部門と連携し、実行管理を行います」といった具体的な記述があれば、審査員に安心感を与えることができます。
「スケジュール」については、事業の各工程がいつどのように行われるかを具体的に記載することが望ましいです。ガントチャートなどの表を用いて、時系列で視覚的に示すとより効果的です。「2025年6月に設備発注、8月に導入、9月に稼働開始、10月から実績収集」といったスケジュールを示せば、事業全体の流れが明確になります。
「資金」についても非常に重要です。補助金で賄われない部分の自己資金をどのように確保するか、財務的に無理のない範囲で事業を進められるかを示す必要があります。「補助金で賄われない部分は当社の24年度利益剰余金より支出予定です」といった形で、明確な資金計画を提示することで、資金面での懸念を払拭することができます。また、銀行の融資予定や資金調達の見込みについても言及しておくと説得力が増します。
「技術・ノウハウ」については、これまでの業務実績や同様のプロジェクト経験を挙げて、社内に必要な能力があることをアピールします。「本事業で導入する加工機は、当社が19年に採用したモデルの後継機であり、操作ノウハウが既に蓄積されている」などの記述により、立ち上がりのスムーズさや安定稼働の見通しを示すことができます。
さらに、「リスク管理」の視点も補足的に盛り込むと、より信頼性が高まります。事業の実施には、納期遅延やコスト超過など、さまざまなリスクがつきものです。それらに対してどのような対策を講じるかを記載しておくことで、「この会社はしっかり準備している」と評価されます。たとえば、「万が一、設備納入が遅れた場合は、既存のラインを一部流用して先行稼働する準備がある」など、柔軟な対応策を示すと訴求力が強まります。
実現可能性の高さは、補助金申請書の中でも特に重視される評価項目です。内容の魅力だけでなく、それを実現するための「組織体制」「スケジュール」「資金計画」「ノウハウ」の4つの柱を丁寧に記述し、加えてリスク対策も盛り込むことが、審査員に安心感と納得感を与えます。なお、「ノウハウ」で「勤続20年以上の熟練したベテランが多い」と書いているのに、「体制」で「優秀な若手メンバーを中心にしたチームを組む」と書くなど、整合性が取れていなければ、実現可能性が低いと判断されます。
補助金はあくまで「公的資金」であり、無駄なく、確実に成果を生むことが期待されています。自社の強みや課題、準備状況をしっかり整理し、事業の確実性を最大限にアピールしていくことが、補助金採択への近道となります。
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