
国では「カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすること)」を重点施策として掲げ、その一環として「子育てエコホーム」など省エネ住宅の新築・改修費用を助成する制度を実施しています。各自治体でもその国の動きに呼応して省エネ住宅関係の助成金を設けています。
その中でも特に規模が大きいのが東京都の「東京ゼロエミ住宅」です。「ゼロエミ」は「ゼロエミッション(カーボンニュートラルとほぼ同義)」の略です。今回は2025年度の東京ゼロエミ住宅について紹介します。
◇ ◇
「東京ゼロエミ住宅」は高い断熱性能や省エネルギー設備を備えた住宅を普及・推進し、家庭からの温室効果ガス排出量を削減するための取り組みです。この取り組みを通じて、「高断熱による室内の温度差の縮小により、快適性を向上させ、ヒートショックの予防や健康維持にも寄与」、「省エネ設備導入による光熱費の削減」、「結露の抑制、カビやダニの発生の減少、建材の劣化防止による住宅の長寿命化」などの効果が期待できるとのことです。地球温暖化の影響が年々深刻になるなか、こうした助成制度は一家庭単位での環境対策であると同時に、防災やエネルギーコストの削減にもつながる実用的な選択肢にもなります。
「東京ゼロエミ住宅」は省エネ住宅の新築・改修のほか、太陽光発電などの再エネ設備にも助成が下ります。
戸建住宅1戸あたりの新築費用に対して、水準A:240万円、水準B:160万円、水準C:40万円が助成されます。水準A~Cとは、東京都が定める住宅の省エネルギー性能を示す基準です。「外皮平均熱貫流率(UA値)」と「再生可能エネルギーを除く一次エネルギー消費量の削減率」で分類されます。
最高の水準Aは「UA値0・35ワット/平方メートルK以下、省エネ削減率45%以上」、最低の水準Cは「UA値0・60ワット/平方メートルK以下、省エネ削減率30%以上」となります。
太陽光発電システムの設置費用は対象機器の発電量およびオール電化住宅か否かで助成額が変わります。たとえば、「オール電化住宅かつ3・6キロワット以下の発電量」の場合は13万円/キロワット(上限39万円)、「オール電化以外の住宅かつ3・6キロワット超50キロワット未満」は10万円/キロワットとなります。50キロワット以上となった場合は助成対象外となります。
蓄電池システムの設置費用について、12万円/キロワット時が助成されます。V2H(Vehicle to Home)システムの設置費用も対象となり、機器費の1/2が最大50万円まで助成されます。
なお、電気自動車を所有し、かつ太陽光発電設備を設置している場合は10/10を最大100万円まで助成します。
また、一定の要件を満たす新築の東京ゼロエミ住宅については税制優遇も受けられ、不動産取得税が全額減免される「太陽光パネル付きゼロエミ住宅導入促進税制」が適用されます。
申請者は「東京都内に新築する個人または法人」であり、あくまで「施主」ですが、ハウスメーカーなどの建設業者が申請代行するケースが多いです。申請には、設計図面、省エネ計算、設備仕様書など専門的な知識や書類が必要となってくるためです。申請手続きは設計確認審査、工事完了検査、助成金申請の3つのステップがあります。「設計確認審査」では工事実施前に住宅の設計が適切かどうか審査されます。「工事完了検査」では工事完了後に、納品書や設置写真などを添付した施工状況報告書を提出し、検査を受けます。上記が完了して、ようやく助成金申請ができます。
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今回紹介した「東京ゼロエミ住宅」のように、環境負荷の低減と快適な住環境の実現を両立させる取り組みを支援する助成制度が多くの自治体で実施されています。住宅の建築を検討している地域でも同様の補助金が出るかどうかについては、自治体の公式サイトや関連資料を確認することが重要です。
特に、地域によって補助内容や要件が異なるため、早めに情報収集を行うことで、より多くの支援を受けるチャンスを広げることができます。
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