
財団のこれまでのまちづくりの経験と人員を総動員し、外構や植栽豊かな住環境や複数のコミュニティ施設による多世代交流、全344区画の全戸にホームセキュリティを標準装備する安全・安心などを提案した。「東日本大震災では地元の工務店も被災し、住宅供給が滞る状況が続いていた。
財団として被災地で高水準のまちづくりをすることで、その周辺で復興に取り組む工務店の参考事例を残したかった」(財団)という。
これまで多くのまちづくりをコーディネートしてきた財団だが、青木徹同財団専務理事はこれからは「より複合的なまちづくり」の視点が求められると話す。
福岡県北九州市城野地区で財団がコーディネートした「ボン・ジョーノ3街区」(写真)では、街区単位でCO2排出量の大幅削減を目指した「ゼロ・カーボン」に加えて、住民主体のコミュニティ形成を促すタウンマネジメントの導入を試みた。
茨城県つくば市で開発中の「ソシエルみどりの」は、財団として初めて集合住宅と保育園を誘致した複合的なまちづくりの試みだ。
多世代が共存でき、持続可能なまちづくりを目指し、住民の交流を促すコミュニティ施設や貸し農園の設置や、保育園を誘致して子育て世帯を呼び込む工夫、子育て家族の祖父母の一時的な近居を実現する賃貸集合住宅など、先導的な提案を盛り込んでいる。
青木専務理事にこれからの財団のまちづくりについて聞いたところ、「低炭素化の要請や少子高齢社会への対応、子育て環境の整備など、今日的な課題に応えられる、持続可能なまちづくりをしていきたい」と答えてくれた。
まちづくりに求められる要素は、質の高い住宅とその景観だけでなく、医療や福祉、介護、公共交通、商業施設など、多くの事業者との連携体制を構築し、多様な事業展開を図る必要性がある。企業単独では難しい複合的な提案も、財団なら各社の技術や経験を持ち寄り、さまざまな選択肢のなかから最適な提案を導けそうだ。
土地取得先の拡大も図りたいという。これまでは、UR都市機構が開発した大規模ニュータウンなどをメーンに手掛けてきた。これからは、住宅団地の再生案件のほか、民間デベロッパーや区画整理組合などとも連携し、まちなか再生や医療福祉拠点と連携したまちづくりなどにも取り組む必要があるという。
「財団という中立的な立場を生かして、健康で元気に幸せに暮らせるスマートウェルネスシティや、医療や福祉、商業などの生活機能が集まるまちなかへの居住など、国の方向性に沿ったまちづくりの提案を強めていきたい」(青木専務理事)とした。