一般的な多世帯住宅には、居室以外は共有というタイプから、玄関や水回り(キッチン・バス・トイレ)などは別だがお互いに行き来できるタイプ、テラスハウスのように完全に分離・独立したタイプなどがあります。以前は共有タイプが多かったのですが、「生活への干渉」や「ライフスタイルが異なることへのストレス」の理由から、共有するスペースと分離するスペースを備えたプランが主流となっています。キッチンやバスが別なら、親世帯が就寝中の深夜の帰宅時でも入浴や食事が(多少気配りは必要でしょうが)可能となるからです。
多世帯同居が注目される背景には、高齢社会の進展により高齢夫婦2人や高齢単身での居住が増加し、親世帯に介護など将来への不安の高まりがあります。一方で、若夫婦世代も共働きが一般化して、大都市圏では待機児童問題が注目されるなど、さまざまな問題が表面化しつつあります。
旭化成ホームズ「孫共育」の提案
多世帯同居が話題になるキッカケの一つとなったのが、旭化成ホームズが打ち出したキーワードの「孫共育」提案といえるでしょう。親世帯と子世帯をつなぐ位置に、孫のスペース(子ども部屋など)を配置する「孫共育ゾーニング」を導入。子世帯の夫婦が仕事に出て不在の間は、親世帯が孫の面倒をみる仕組みとなっています。同社の二世帯住宅研究所によると、祖父母の日常的な世話を受けることで「孫は礼儀正しく高齢者に優しくなるとともに、親世帯も明るくなる」と評価しています。
働く妻の「働いていたい」という希望も、多世帯住宅志向の広がりの背景といえそうです。住環境研究所がまとめた、『共働き家族の暮らしと意識に関する調査』の結果で、フルタイム就労妻の72・0%とパートタイム妻の64・1%が「就業は自分に合っている。できれば就業していたい」と回答しています。妻の就業なしには家計が立ちゆかない実態も少なくないとも思われますが、夫以上に前向きな就業意識となっていることがわかりました。