住宅会社もこうした動きに応え、多世帯に対応した商品を提供し始めています。三井ホームは、光文社の女性誌「VERY(ヴェリィ)」との同社のコラボレーション企画で、二世帯3世代住宅『ツインファミリーiii(トロワ)』を商品化しました。アクティブシニア層の親世代とその子世代夫婦、孫世代の3世代を想定した二世帯住宅で、住まいの一部をシェア(分かち合う)したり、コネクティング(つながり合う)する工夫を施したものです。
一方で、少子高齢化や晩婚化に加え、家族とともに暮らす安心感や経済的なメリットから、親子両世帯だけでなく親族同居も含め、同居形態が多様化。いざ生活を始めてみると、親子であってもお互いの思惑や違いが出てきて、「こんなはずではなかった」という声も聞かれます。積水ハウスでは「多世帯同居自体が、通常の単世帯と比べると、かなり複雑な特性であるということ。同居の理由が、結婚や出産、あるいは離婚によるものであったり、経済的な理由も。また、同居する相手が若いのか高齢なのか、娘夫婦同居か息子夫婦同居かによっても違う」と分析しています。
積水ハウス、家族の距離感「重なり度」を策定
そこで、積水ハウスが開発した多世帯同居住宅の新たな提案手法が『カゾク・ト・カゾク』。新たな指標として〝重なり度〟を策定し、理想とする暮らしのシーンや家族の距離感を踏まえ、家族1人ひとりに合った住まい方を提案するというものです。基本は顧客が理想とする暮らし実現のためのコミュニケーションツールで、「どう暮らしたいか」を確認する意味もあるとしています。
こうした動きは、多世帯同居にメリットを見いだした子世帯からの積極的な働きかけによるものが多く、むしろアクティブシニアである親世帯の方が及び腰のケースもあるというほど。親世帯からの働きかけが多かった、かつてのスタイルからは様変わり。多世帯住宅は、住宅カテゴリーの1つとして市民権を得たといえそうです。