ZEH予算、総枠前年並み水準に 住宅産業界に厳しい現実

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政府は2018年度当初予算を閣議決定した。ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)補助金は総額でほぼ前年度並みといわれており、住宅産業界が要望していた3省連携による大幅な増額は実現できなかったもようだ。一方で、税制面では懸念されていた新築住宅の固定資産税の減税措置の延長や、買取再販向け住宅に関する不動産取得税の延長・拡充など、概ね要望は認められてはいる。だが、消費税率10%へのアップを前に、市場の刺激策として期待されたZEH補助金が、予算の壁に阻まれた格好となったことは、住宅受注が依然鈍化基調にある業界にとって厳しい現実となった。

一般社団法人住宅生産団体連合会(住団連)が、2018年度予算の「一丁目一番地」と位置づけているZEH補助金。国土交通・経済産業・環境の3省連携によって予算額の大幅増が期待されていたところに、経産省単独だった17年度の当初予算水準に留まりそうだとの情報が。これを受けて、和田勇会長(積水ハウス会長兼CEO)をはじめ幹部を動員して、連日復活折衝のための与党有力議員へのロビー活動を展開し、巻き返しに動いた。

最終的には経産省・資源エネルギー庁から環境省に移管し、新たに『ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等による住宅における低炭素化促進事業』となった補助事業は、『高性能建材による住宅の断熱化リフォーム事業』との合算で85億円の予算化を発表。環境省は「(エネ庁の)17年度水準の予算規模をほぼ確保できた」としている。

ちなみに、エネ庁の委託事業で一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)が運用する補助金事業『ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)支援事業』の実績では、17年度における計10回の公募での認可件数は7699件。1件75万円の補助金なので総額では約58億円となり、事務経費などを含めれば約60億円規模とみられる。

さらに、経産省は17年度補正予算と18年度本予算を合計して、ZEH関係で約30億円規模とした上で「3省連携で合算すると17年度並みの予算」と説明した。

国の財政状況が厳しい中で、18年度予算で前年並みの補助金の規模が確保できたことは「ある意味成功」との見方もできる。しかし、ZEH自体がいまだに普及黎明期にあることを踏まえると、1件あたりの金額とともに総額としての規模が必要となる。だが、大幅増が必要との住宅産業界からの要望に対し、財政当局による壁は厚い。「産業として自立してもらわなければ。いつまでも補助金頼りでは困る」との論理に、はじかれた格好ともみえる。

前例となる住宅向けの設置補助制度では、エネ庁の『太陽光発電システム導入促進事業』がある。補助金の導入効果でシステムの価格は順次低下。それに伴い、市場もFIT(固定価格買取制度)の後押しもあり拡大したことで、国の補助金は13年度に廃止された。

2017年12月28日付1面に掲載
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2018年12月25日 住宅産業新聞社 編集部

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