
これに対し、業界サイドでは「新設住宅着工だけで判断して好調といわれても、実際に伸びているのは賃貸住宅だけで、注文住宅など持ち家は厳しい」と認識の違いを嘆く。しかも、現状での賃貸住宅着工は相続税法改正に対応し、資産家層が手持ちの遊休地などに建てているものが多く、入居者という需要に裏付けされたものではない。
また、住宅産業界が需要の指標とする受注と着工には、約半年のタイムラグがある。お客さんとの契約を結んだ段階が受注。それから諸々の手続きに時間をかけ、確認申請が受理された段階で着工となるからだ。一般の商売で考えれば、歳末商戦が大きく落ち込んでいる時に、仮に半年前に好調だった中元商戦をして「好調な業界だ」と評されるのに等しい。それが正しい評価といえるのか疑問でならない。
業界として強く要望していた贈与税の非課税枠の拡大だが、直接的には認められなかったものの、希望を感じさせる記述はみえる。具体的には、大綱の『主要項目以外の部分』に「住宅投資の波及効果に鑑み住宅市場の動向を幅広い観点から注視しつつ、経済対策等のこれまでの措置の実施状況や今後の住宅着工の動向等を踏まえた住宅市場に係る対策についての所要の措置」項目を指す。
実は、この項目は「所得税・贈与税関係」としてあげられたものの、事前の「査定」においては、要望が認められない事項に区分されていた。それは、住宅産業界に対する財務省や与党税調内の厳しい認識の反映といっていい。贈与税の非課税枠拡大へ、運動を展開してきた住団連の和田勇会長(積水ハウス会長兼CEO)以下業界トップにとっても、これが知らされた段階では「ほぼ白旗」の感があったという。
ところが、最終段階で大綱に書き込まれる結果に驚きが走る。事態の好転には、住宅産業に対する理解が深い自民党有力議員の強い後押しがあったといわれている。内容は、多少文言の前後の入れ替えはあるが16年度の大綱とほぼ同じ。ただ、前年度が「必要な対応」となっていたのに対し、今回は「所要の措置」と表現が変化しており「さらに一歩前進の可能性」(関係者)と期待する。