
今後の住宅市場のカギを握るとみられる住生活基本計画。国土交通省は同計画の中で、リフォーム・既存住宅流通等の住宅ストック活用型市場への転換の遅れを指摘した。17年度の税制大綱も、この流れに沿ったものといっていい。
とはいえ、いかに住宅産業が裾野が広い産業であっても、現状のリフォームや既存住宅流通市場だけでは、経済的な波及効果が小さいのも事実だ。このまま、新築が縮小し続けるのを座視すると、GDPの縮小にもつながりかねない。新たな市場を育成するのに力を注ぐのと同時に、従来の市場の縮小を抑えるべきで、新築住宅との両輪で初めて効果を発揮するというのが住宅産業界の主張といえる。
業界が、新築需要の起爆剤にと考えていたのが、要望の柱と位置づける贈与税の非課税枠拡充。各住宅業界団体の重点事項の一つであり、中でも住宅生産団体連合会(住団連)は、現行1200万円から2千万円への増額を要望していた。
贈与税の非課税枠については、消費税率10%時の対策で最大3千万円になる予定だったが、増税が先送りになり今年度は同額でのスライド。枠縮小を視野に置いていた財務省に対し、国交省として「2千万円への増額はいえない状況」だったという。
業界内にも「2千万円になると、(10%時の)3千万円との差が少なくなり、インパクトに欠ける」(不動産協会の木村惠司理事長)という見方もあり、意見の分かれるところ。ただ、これに対しては「上限を3千万円に抑えず、4千万円や5千万円に引き上げ」との声も出ている。
非課税枠は、贈与税を払う人に対する恩恵であり、ともすれば「金持ち優遇」との批判も出る。しかし、ある関係者は「住宅のような高額商品は、資金に余裕のない人を動かすのは至難の業。とりあえず富裕層が動かなければ進まない」という。「ここまで冷え切った市場には、強いカンフル剤が必要」と強調する。
これまで与党税調内部では、住宅業界は好調との認識から、業界の陳情に対して比較的鈍い反応だったという。「ローン減税をはじめ、贈与税の非課税枠も住まい給付金も、税率10%を前提に手当てした。新築住宅着工が好調で、しかも増税が延期になったのに、これ以上欲張るな」ということのようだ。