総務省の人口推計によると、2023年の65歳以上の高齢者の割合は29%で過去最高を更新しました。高齢労働者は年々増加しています。それに伴い、高齢労働者が労働災害に巻き込まれるリスクも高くなっています。そこで厚生労働省では、高齢労働者も含む全ての労働者が快適に働けるための取組をした企業に対して、その経費の一部を補助する「エイジフレンドリー補助金」を設けています。
本補助金は例年公募されており、2024年度の公募期間は7日から10月31日となります。対象企業は労災保険に加入し、かつ1年以上事業を実施している中小企業です。「ものづくり補助金」等の中小企業庁の補助金とは異なり、みなし大企業でも申請できます。本補助金は取り組みに応じて、「高年齢労働者の労働災害防止コース」、「転倒防止や腰痛予防のためのスポーツ・運動指導コース」、「コラボヘルスコース」の3つのコースに分かれます。
「高年齢労働者の労働災害防止コース」は高齢労働者が危険な場所の作業や負担が大きい作業をする際の安全を確保するための設備投資を支援します。60歳以上の高齢労働者を1名常時雇用していることが申請条件です。対象となる設備は、転倒事故を防止するための階段の手すり・スロープの設置、重量物の取扱による腰痛対策としてのパワーアシストスーツ導入、熱中症防止対策として、体温を下げるための機能のある服(ファン付きウェアなど)の導入など、高齢労働者の安全に資することを証明できれば非常に幅広いです。補助額は補助率1/2、上限額100万円です。
「転倒防止や腰痛予防のためのスポーツ・運動指導コース」は労働者の健康増進のために専門家による運動指導等を実施した費用を補助します。このコースでは労働者を常時1名以上雇用していれば申請ができます。つまり、高齢労働者だけでなく、全年代の労働者への運動指導が対象となります。
「専門家」とは医師、理学療法士、労働安全・衛生コンサルタント、アスレティックトレーナーなど、身体機能チェックや運動指導を業務としている職業の方を指します。その専門家による指導にかかった経費が対象となります。なお、運動指導はあくまで転倒防止か腰痛予防に関するものに限られており、それ以外は対象外となります。また、物品の購入も対象外です。補助額は補助率3/4、上限額100万円です。
「コラボヘルスコース」はコラボヘルスに係る取組を支援するコースです。
コラボヘルスとは、協会けんぽなどの医療保険者と企業が積極的に連携して労働者の健康増進を推進していくことです。このコースも年齢を問わず、常時雇用の労働者が1名以上いれば申請できます。なお、労働者の健康診断情報が医療保険者に提供されていることが必要です。企業が提供した健康診断情報をもとに、医療保険者が健康スコアリングレポートや事業所カルテを提供します。それらを活用した健康増進の取組が対象経費となります。産業医や保健師などの専門家による禁煙・メンタルヘルスに係る健康指導、健康診断結果を効率よく管理するためのシステム導入、栄養指導・保健指導などが対象となります。補助額は補助率1/2、上限額30万円となります。
エイジフレンドリー補助金の各コースは併用することが可能です。ただし、その場合の上限額は100万円となります。また、事業実施期間及び実績報告は例年1月末(24年度は25年1月31日)までであり、それまでにすべての対象経費の支払いを完了させる必要があります。
経費について、法令で義務とされている取組に係るものは対象外となります。たとえば、労働安全衛生法で義務付けられている健康診断に係る費用は対象となりません。あくまで義務とされている取り組みを講じた上で、更なる取り組みを行った場合の経費が対象です。また、自社の労働者のためではなく、顧客のための健康セミナーや生産性向上のための設備改修に係る経費も対象とはなりません。
高齢の労働者がいる場合や労働者の健康増進に取り組みたい場合はエイジフレンドリー補助金の申請を検討してみてください。
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