注目の助成金(209)補助金の目標値になる付加価値額とは?

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補助金では「付加価値額の増加要件」が設けられている場合があります。たとえば、「ものづくり補助金」では「補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、事業者全体の付加価値額の年平均成長率を3%以上増加させる」という要件が設けられています。「付加価値額」は具体的にどんな数値を表しているのでしょうか。

◇ ◇

「付加価値額」とは企業が事業活動によって生み出した価値を数値化したものです。つまり、「利益」とほぼ同義ではありますが、省庁や補助金によってその定義はまちまちです。今回は「ものづくり補助金」の公募要領に明記された定義に沿って説明します。

「付加価値額」は営業利益、人件費、減価償却費を足した数値、となります。営業利益だけでなく、経費である人件費・減価償却費も含まれているのは、利益を上げるためには従業員の働きと設備投資が不可欠だからです。

「ものづくり補助金」における「付加価値額」は、補助上限額2500万円分の設備投資(減価償却費)を通じて、売上げ(営業利益)をアップさせ、その分を「賃上げ(人件費)」と言う形で従業員に還元することで増加することになります。

営業利益は「損益計算書(一定期間の収益と費用をまとめた計算書)」で確認できます。「売上高」から「売上原価」と「販売費及び一般管理費」を差し引いた数値であり、企業が事業活動を通じて得た利益を意味します。

人件費は「損益計算書」の「販売費および一般管理費」という項目で確認できます。人件費は従業員に支払った給与だけではありません。役員給与、賞与(及び賞与引当金繰入)、福利厚生費、法定福利費、退職給与(退職給与引当金繰入れ)も含まれており、それらを全部足す必要があります。また、製造業の場合は「製造原価報告書」に記載の労務費も含まれます。さらに、派遣労働者や短時間労働者の給与を「外注費」として処理した場合はその費用も入れなければなりません。このように、人件費は特に算出が難しい項目です。なお、「ものづくり補助金」において算出できない場合は、平均給与に従業員数を掛けた数値でもよいとされています。

減価償却費は、設備投資にかかった費用を、その設備の耐用年数に応じて一定期間に配分する会計処理上の金額です。「販売費および一般管理費」で確認できます。

「ものづくり補助金」の事業計画では、「補助事業終了後の3~5年の間に付加価値額を年平均成長率3%以上増加させる目標」を設定する必要があります。つまり、未来の営業利益や人件費を記載しなければなりません。

現時点(基準年度)の数値は書類を確認すれば記載できますが、未来の数値は事業計画に沿って現実的に達成可能なものを算出する必要があります。たとえば、営業利益は補助事業にかかわる受注見込案件数から算出し、人件費はその案件数に必要な人員を算出し、減価償却は導入予定の設備の法定耐用年数を調べて算出する等の方法があります。なお、従業員の解雇を通じて目標数値を達成するような計画は不可となります。また、採択された後は、実際にその目標を達成するよう取り組まなければなりませんが、万が一達成できなかったとしても、補助金の返還は原則求められません。

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「付加価値額」は、補助金によっては採択可否にかかわる重要なファクターとなります。その補助金における「付加価値額」の定義をしっかり把握し、必要な数値を正確に算出した上で、事業計画書に適切に反映させるようにしましょう。

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2018年12月25日 住宅産業新聞社 編集部

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