ものづくり補助金、事業再構築補助金、省力化投資補助金など大型の補助金が続々と公募開始しています。これら補助金の採択可否は事業計画の出来によって左右されます。その事業計画では事業の内容はもちろん、申請者が自社の強み・弱みを的確に把握していることも求められます。事業は自社の強み・弱みに基づいて実施されてしかるべきだからです。単に「AIが流行っているからAI関連の事業を行う」というだけでは、よほどのことがない限り採択されません。「仕分け作業はすべて人力で行っており、従業員負担が大きい。その作業を省力化するためにAIを取り入れる」、「経営コンサルとして豊富な知見を培っている。その知見に基づく経営診断ツールを開発するにあたりAIを導入する」などのように、自社の強み・弱みと紐づける必要があります。
その強みと弱みを把握するのに便利なツールとして「SWOT分析」があります。SWOT分析は自社の内部環境を「強み」と「弱み」、外部環境を「機会」と「脅威」に分けて分析する手法です。この4つの要素について、ナビットがコロナ禍の「事業再構築補助金」で採択された「在宅SOHOを活用したコールセンター事業」に沿って説明します。
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まずは内部環境です。ナビットの「強み」は人的リソースの豊富さです。全国6万人超のSOHOスタッフを抱えており、在宅でのコールセンターが可能な素地がありました。また、680万社分の法人データを保有しており、架電対象となる営業先リストが十分にありました。
一方、「弱み」は当時SOHOへ委託する業務が写真撮影など外での業務が大半を占めていることでした。緊急事態宣言の影響で外での業務を控えるSOHOが急増し、膨大な人的リソースを活用できない状況にありました。
続いて外部環境です。「機会」はコロナ禍において人々の外出自粛が増え、在宅ワークの需要が急上昇していたことです。また、全国的な人材不足の影響により、コールセンターのアウトソージング需要が増加傾向にありました。一方、「脅威」は企業が3密を避けるために対面による営業機会が減少しており、それに伴いナビットが扱う法人データ需要が低下していたことです。この「強み」と「機会」を活かし、「弱み」と「脅威」を克服するための事業として「在宅を活用したコールセンター事業」が考案され、補助金申請も採択されました。
このようにSWOT分析を用いて4つの要素を事業計画に落とし込めば、審査員の評価が高くなります。また、補助金申請以外でも、「自社の現状を客観的に把握できる」、「今後の戦略策定のための指針を得られる」と言ったメリットがあります。
なお、SWOT分析には注意点があります。分析者の主観に基づいて誤った分析がなされる可能性があることです。客観性を担保するため、数値・統計データをふんだんに用いるだけでなく、複数人での分析や第三者によるチェックもすることをおすすめします。また、分析は4つの要素に分けることで状況を単純化してしまう恐れがあります。補助金審査員向けの説明資料としては問題ありませんが、自社の状況を適切に理解するのであれば、中小企業診断士などの専門家にチェックしてもらったり他の分析ツールで補完したりすることが必要です。
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