11月に閣議決定された「デフレ完全脱却のための総合経済対策~日本経済の新たなステージに向けて~」(以下「総合経済対策」)に基づき、厚生労働省の令和5年度補正予算案が公表されています。そこで今回は、この予算案に基づき、今後の厚生労働省の助成金について説明していきます。
第一に、「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」が大幅に拡充されます。
この助成金はアルバイト等非正規労働者を正社員に転換した場合に定額支給されるものです。この定額支給される額ですが、現時点(令和5年度)では、正社員化1名につき57万円(42万7500円)(※カッコ内は大企業の場合)が支給されます。しかし、今後は正社員化をさらに促すために、80万円(60万円)に大幅増額されるとのことです。
また、現時点では、対象となる非正規労働者の雇用期間は6ヵ月以上3年以内となっていますが、今後は「6ヵ月以上」に変更される予定です。3年以上長期雇用されている非正規労働者も正社員化させるための措置とのことです。
さらに、本助成金では「正社員転換制度」を就業規則等に規定する必要がありますが、この制度を新規に規定して正社員転換した場合、20万円(15万円)が加算されるようにするとのことです。また、職務内容や勤務地などを限定して選択できる「多様な正社員」制度を導入した場合、現時点では、9万5千円(7万1250円)が加算されますが、今後は40万円(30万円)に大幅増額されるとのことです。
第二に、「産業雇用安定助成金(事業再構築支援コース)」が「産業雇用安定助成金(産業連携人材確保等支援コース)」に変更されます。
「事業再構築支援コース」では、事業再構築補助金に採択され、交付決定を受けた企業が補助対象事業実施のために人材確保した場合に助成されます。一方、「産業連携人材確保等支援コース」では、対象となる補助金として「ものづくり補助金」が新たに追加されます。
要件としては、「事業再構築支援コース」とほぼ変わらず、事業再構築補助金かものづくり補助金の補助対象事業を実施する前後に、必要なスキルや知見等を有する労働者を1人以上確保する必要があります。その労働者は常時雇用する労働者であり、かつ年収350万円以上でなくてはなりません。
助成金の支給申請は対象労働者を雇い入れてから1期(6ヵ月)ごとに行われ、125万円×2期(90万円×2期)が支給されます。今後事業再構築補助金かものづくり補助金の申請を検討する際は、本補助金の申請も念頭に入れておくことをおすすめします。
第三に、両立支援等助成金(育休中等業務代替支援コース)が新設されます。両立支援等助成金は、労働者が介護・育児と仕事を両立できるよう企業が制度整備するのを支援するものです。その内、「育休中等業務代替支援コース」は、労働者が育児休業や育児のための短時間勤務をしていても、滞りなく業務を遂行できるよう業務体制を整備した際に支給されるものです。
本コースは他の労働者が業務を代替した際に手当支給した場合や代替要員を新規雇用した場合に支給申請ができます。
育児休業中の手当支給をした場合、業務体制整備をすると定額5万円、業務代替手当を支給するとその支給額の3/4(上限10万円/月、12ヵ月まで)、計125万円までが支給されます。
短時間勤務中の手当支給をした場合は、業務体制整備で2万円、代替手当支給で3/4(上限3万円/月、子が3歳になるまで)、計110万円が支給されます。育児休業中に代替要員を新規雇用した場合、代替期間7日以上で9万円、6カ月上で67万5千円が支給されます。
なお、本コースで申請できるのは1年最大10人まで、初回申請から5年間までとなります。
「総合経済対策」では「人材不足の解消」をメインテーマの1つとして掲げており、今後の助成金も人材確保に関して特に力を入れている印象があります。人材不足を課題と感じている方は、今回ご紹介した助成金の活用を検討してみましょう。
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