補助金を申請できる事業者は、株式会社、有限会社、合同会社といった「企業」だけだと考えている人は少なくないかと思います。しかし、実はそれ以外の法人でも申請できる場合があります。今回は、中小企業庁で現在公募中の「事業再構築補助金」を事例として、企業以外で申請できる法人について解説します。
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まず、弁護士、弁理士、税理士、行政書士、社会保険労務士といった、いわゆる「士業」の事務所は「事業再構築補助金」上では「中小企業」とみなされ、補助対象者となります。協業組合、商店街振興組合、商工会、日本公認会計士協会といった、複数の法人で構成された団体も要件を満たせば申請できます。
特定非営利活動法人(NPO法人)は、「特定非営利活動」自体は「事業再構築補助金」の税源となる法人税の課税対象外となるため申請対象外となりますが、法人税を納める必要がある「収益事業」を行う場合、その事業について「事業再構築補助金」の申請が可能です。「収益事業」とは「継続して事業所を設けて営まれる事業」を指し、「法人税法施行令第5条」に具体的な事業が列記されています。物品販売、不動産販売、金銭貸付、製造、運送、飲食など、たいていの事業が該当します。
◇非営利・共益的活動は対象外
一般財団法人と一般社団法人についてもNPO法人と同じく補助対象者になります。しかし、「非営利型法人(非営利性が徹底されているか、または共益的活動を目的としている法人)」に該当する場合は対象外となります。つまり、株式会社と同じように、収益事業を普通に行って法人税が課されている法人でないと申請できないということです。
医療法人も公益性が高いため原則申請できません。ただし、「社会医療法人」は申請できます。
社会医療法人は救急医療、周産期医療、へき地医療など、地域で特に必要とされる医療の提供を担う医療法人です。また、医療法人ではないクリニックも申請できます。どちらにしろ、対象となる事業は「収益事業」です。医療自体については原則補助対象とすることはできません(保険適用外の医療であれば対象になる場合があります)。
上記のように、補助対象者の要件を満たしていても収益事業を行っていなければ「事業再構築補助金」の申請ができません。また、法人の運営費用の大半を公的機関に依存している法人も補助対象外となります。公的機関である地方自治体も当然申請できません。政治団体、宗教法人といった団体も、たとえ収益事業を行っているとしても、その団体の運営理由が「事業再構築補助金」の趣旨と乖離するため、補助対象となりません。
「企業」であっても海外企業は申請対象外です。補助金は日本の経済活性化を目的とした施策のため、国内に本社があることが絶対条件となります。なお、海外企業の子会社で国内に本社がある企業であれば、申請できる場合があります。
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「事業再構築補助金」を事例に企業以外で申請できる法人について解説しました。医療法人や自治体などは「事業再構築補助金」で申請対象外となっていますが、それ以外の補助金であれば申請できる場合があります。
たとえば、厚生労働省の「キャリアアップ助成金」や「働き方改革支援助成金」など労務に係る助成金は、医療法人でも申請できます。環境省の「建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業」など業務用建築物の改修に係る補助金については、医療法人だけでなく自治体も申請ができる場合があります。「自治体だから補助金を申請できない」、「収益事業を行っていないから助成金の申請対象外だ」と諦めず、興味の補助金があれば、一度公募要領を見て、補助対象者を確認してみることをおすすめします。
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