注目の助成金(204)「不正受給」とみなされてしまうケースとは?

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昨年、中小企業庁の「IT導入補助金」の不正受給が横行しているとして問題視されました。「持続化給付金」や「雇用調整助成金」の不正受給のニュースも毎日のように報道されています。

不正受給を意図的に行っているのは論外ですが、たとえ故意でなくても不注意により「不正受給」とみなされてしまう場合もあります。そこで今回は「不正受給」と見做されないよう特に注意すべき点について解説します。

◇ ◇

第一に注意すべきは、事実と異なる内容を事務局に報告する「虚偽報告」です。

たとえば、「会計ソフトを買ったのに『勤怠管理ソフト』として報告する」、「実際には労働していた日を休業扱いにする」、「1万円で買った設備を『3万円』と報告する」と言った事例が該当します。

特に3つ目の事例は「架空の経費計上」や「水増し」に当たります。「業者に本来支払った費用は100万円なのに、200万円まで水増しした請求書に偽造する」、「実際には出展していない展示会の費用を計上する」などの行為によって経費を偽るのは明らかな不正です。また、取引先に実際より高額な領収書を発行してもらった場合、その取引先も罰則の対象になる可能性があります。

第二に注意すべきは「期限」です。

補助金の交付決定前に対象経費を購入することは原則認められません。交付決定前に購入した設備に係る契約日を交付決定後に改竄することは罰則対処になります。また、経費の支払が事業実施期間内に間に合わないからと言って、日付を事業実施期間内にした領収書を先に発行してもらうことも不正受給とみなされます。

後者の場合は事務局に相談すれば、期限を延長してくれることもあるため、書類の日付は可能な限り実際の日付と合わせましょう。

第三に注意すべきは「二重受給」です。同じ事業・経費に対して複数の補助金を受給することは原則禁じられています。

たとえば、新規事業のために購入する設備について、「事業再構築補助金」と「ものづくり補助金」を同時に申請した場合、どちらも不正とみなされて補助金をもらえないことになります。また、「事業は同じだが申請する経費は別」も認められません。補助金申請を積極的に行っている事業者は、事業や経費に重複がないか事前にチェックしておく必要があります。

第四に注意すべきは「名義貸し」です。「実際は業務委託なのに、対象外である『常時使用する労働者』にカウントする」、「雇用していない人物を雇用したと偽る」、「実際には働いていない家族を一時的かつ形式的に雇用契約する」といった手段で助成金を受給した場合、不正行為とみなされ、全額返金の他、罰金も科される可能性が高いです。

特に業務委託、派遣社員、週20時間未満労働のアルバイトなど、「常時使用」と認められない場合がある労働者については、その助成金ではどのような扱いになっているのか確認しておくことをおすすめします。

第五に注意すべきは「キックバック」です。先述のIT導入補助金の不正受給で多く見られた事例です。

IT導入補助金はIT導入支援事業者が扱うITツールの導入費用の一部を支援する補助金です。そのITツールを申請者が導入した場合、IT導入支援事業者が「協賛金」や「紹介料」と言った名目で申請者にキックバックを提供する事例が多発しました。

本来、IT導入支援事業者は申請者が不正受給しないようチェックする立場にあるはずでしたが、逆に不正受給を促していたのです。国の正式な認定を受けた業者であっても、「この補助金を使えば実質タダでウチの商材を購入できます」、「あの補助金なら自己負担額を上回る報酬がもらえます」などと謳っている場合は注意が必要です。

◇ ◇

補助金・助成金の不正受給は「知らなかった」では許されない場合もあります。士業などの専門家にも確認しつつ、ルールを破らないようにしましょう。

2025年02月18日付6面に掲載
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2018年12月25日 住宅産業新聞社 編集部

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