
経済産業省は8月31日、2024年度概算要求を公表しました。概算要求とは、翌年度の予算編成に向けて、各省庁が実施予定の事業とその経費を記載して提出する要求書です。つまり、概算要求の時点ではまだ予算は確定していないのですが、概算要求を読み解くことで、翌年度の省庁の取組を高い確度で予測できます。
経済産業省は、事業再構築補助金やものづくり補助金等の主要な補助金を担当しています。24年度の補助金はどうなるのでしょうか? 今回は経済産業省の概算要求に基づき、今後の補助金の動向について解説します。
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24年度の概算要求において、中小企業関係の取組では主に3点の方針が示されています。
第一に、物価高対策と持続的な賃上げ支援です。エネルギー価格や原材料費等の物価高は全国の事業者に深刻なダメージを与えています。また、少子高齢化による構造的な人材不足も深刻化しています。そこで、価格転嫁対策や省人化投資等を支援するとともに、持続的な賃上げが可能な環境整備を行うとのことです。
第二に、GXやDXに関する設備投資の支援です。GX・DX関連産業を今後最重要となる産業と位置付け、それらに係る設備投資を支援するとのことです。
第三に、地域経済の活性化です。地方自治体において深刻化している少子高齢化や後継者不足を解決するため、事業承継や地域特有の社会課題に対して支援を行うとのことです。24年度は上記方針に基づき、各補助金の要件が変更される可能性があります。
事業再構築補助金は、一部では「23年度で終了するのでは?」と噂されていましたが、中小企業庁の「概算要求等ポイント」に「事業再構築補助金」の文言が明記されているため、24年度も引き続き公募が行われると想定されます。また、賃上げやGX関係で何らかの拡充・要件変更がなされると想定されます。
ものづくり補助金・小規模事業者持続化補助金・IT導入補助金が含まれる「中小企業生産性革命推進事業」についても、中小企業庁の「概算要求等ポイント」に文言が明記されているため、引き続き公募が行われると想定されます。また、ものづくり補助金等についても賃上げやGX関係で何らかの拡充・要件変更がなされると想定されます。
工場の立地や大型設備投資等に対して億単位の補助を行う「サプライチェーン補助金」については、「24年度経済産業省関係概算要求等概要」によると、サプライチェーンに関する記述が多く、引き続き公募が行われると想定されます。特に「GXサプライチェーン構築支援事業」、「蓄電池の製造サプライチェーン強靱化支援事業」、「GXを実現する半導体の製造サプライチェーン強靱化支援事業」について多額の予算が割かれており、これらの設備投資に関するサプライチェーン補助金が実施されると考えられます。
また、億単位の省エネ設備投資を支援する「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業」についても、「24年度経済産業省関係概算要求等概要」に明記されており、引き続き公募されると想定されます。
その他の補助金としては、給湯器の購入費用を補助する「高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金」や電気自動車の導入を支援する「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」も明記されています。特に「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」は概算要求予算額が1076億円であり、23年度当初予算額200億円よりはるかに膨大な金額を計上しています。24年度はさらに拡充した内容で電気自動車等の購入を支援すると想定されます。
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前述の通り、概算要求に記載された内容はまだ確定されていない情報となります。しかし、概算要求を読むことによって、どのような補助金が出るか予測することができ、その予測に基づき対策を立てることができます。
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