注目の助成金(160)2024年度の補助金どうなりますか?

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2023年8月31日、ものづくり補助金・事業再構築補助金などを管轄する経済産業省の24年度概算要求が公表されましたが、同日、助成金を管轄する厚生労働省でも概算要求が公表されました。前回説明した通り、概算要求は翌年度の実施予定の事業について各省庁が提出する要求書です。概算要求から、翌年度の省庁の取り組みを高い確度で予測することができます。

厚生労働省は、キャリアアップ助成金や特定求職者雇用開発助成金等の雇用系助成金、業務改善助成金や働き方改革推進支援助成金等の生産性向上・労務改善系助成金を主に扱っています。24年度の助成金はどうなるのでしょうか。今回は厚生労働省の概算要求に基づき、今後の助成金の動向について解説します。

◇ ◇

厚生労働省は、企業関係の重点テーマとして「構造的人手不足に対応した労働市場改革の推進と多様な人材の活躍促進」を掲げています。経済産業省の概算要求においても、少子高齢化等による構造的な人手不足が課題として挙げられ、そのために持続的な賃上げ支援を行っていく必要があるとしています。

厚生労働省においても、中小企業や小規模事業者が最低賃金の引き上げや従業員の持続的な賃上げを問題なく行えるよう、生産性向上の取り組みや非正規雇用労働者の待遇改善を支援するとのことです。

その一環として、「最低賃金・賃金の引上げに向けた中小・小規模企業等支援、非正規雇用労働者の正規化促進、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」という項目に関する予算が、23年度当初予算額(以下23年度)が625億円だったのに対して、24年度概算要求額(以下24年度)は677億円と約50億アップしています。「賃金アップのための生産性向上」という名目で、事業場内最低賃金の引き上げを条件とした設備投資を支援する「業務改善助成金」のさらなる拡充が予想されます。また、非正規雇用労働者の正規転換等を支援する「キャリアアップ助成金」についても、「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」のために要件緩和を行うことが明記されています。

また、同様に予算がアップした項目として、「リ・スキリングによる能力向上支援」が挙げられます(23年度の1379億円に対して24年度は1468億円)。「リ・スキリング」とは日本語でいえば「学びなおし」であり、労働者が新しいスキルや知識を習得することを指します。従業員の研修を支援する助成金といえば「人材開発助成金」ですが、賃金助成の拡充を行うことが明記されています。また、厚生労働省では、特にデジタル分野での人材育成に重点を置いており、その分野に係る研修について特に助成金の拡充が行われると想定されます。

他の助成金についても、軒並み関連予算がアップしています。仕事と育児・介護両立関連の項目(23年度の162億円に対して24年度は200億円)については、業務代替人員の確保等について拡充すると明記しており、「両立支援助成金」の拡充が想定されます。また、人材の就労関連の項目(23年度の945億円に対して24年度は955億円)では、高齢者が働きやすい職場環境の整備や中小企業による障害者の雇い入れ支援を明記しており、高齢者の雇用継続を支援する「65歳超雇用推進助成金」や就職困難者の雇用を支援する「特定求職者雇用開発助成金」の拡充が想定されます。

さらに、ワーク・ライフ・バランス関連の項目(23年度の141億円に対して24年度は147億円)では、勤務間インターバル制度の導入支援や中小企業による時間外労働削減の取組支援等の文言があり、時間外労働削減に資する設備投資を支援する「働き方改革推進助成金」が24年度も引き続き募集されると想定されます。

◇ ◇

予算の概算要求はあくまで「このような取り組みをしたい」という要求であり、予算が確定した際の内容と異なる可能性があります。概算要求を通じて今後の動向を予測しつつ、政治経済関連のニュースを随時チェックしておきましょう。

2023年09月25日付6面に掲載
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2018年12月25日 住宅産業新聞社 編集部

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