
新型コロナの影響により従業員を休業させざるを得ない企業に対して休業手当の最大10割を助成する厚生労働省の雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)ですが、申請手続きが煩雑で、なおかつ要件が頻繁に変更されているため、申請する側としては理解しにくい点が多いです。また、役所でも膨大な申請数を処理しきれず、支給に遅れが生じています。
このような課題を解消するため、雇用調整助成金の申請手続きが随時簡素化されています。そこで、今回は雇用調整助成金の手続き簡素化の内容について解説します。(5月21日時点の情報です)
(1)休業等計画届の提出は不要
雇用調整助成金は、支給申請前に「何人の従業員が何日間休業するか」などを記載する休業等計画届を提出する必要がありました。しかし今回からそれの提出を不要とし、支給申請のみ行えばよいこととなりました。
(2)実際に支払った休業手当で助成額を算出
雇用調整助成金では、助成額を算定するために、前年度の賃金総額、従業員数、年間所定労働日数などの数値を細かく記載し、従業員1人当たりの平均賃金額を算出しなければなりませんでした。
しかし今回から助成額は「実際に支払った休業手当額」をもとに助成額を算出できるようになりました。ただし、従業員20人以下の小規模事業主が対象です。
また、それ以外の事業主の助成額算出についても、以下のような簡素化がなされます。変更前では、より正確な平均賃金を算定するために、「労働保険確定保険料申告書」のみを用いることとなっていました。しかし今回から「源泉所得税」の納付書も用いてもよいこととなりました。また、年間所定労働日数も休業等実施前の任意の1ヵ月をベースにして算出してもよいこととなりました。
(3)雇用調整助成金の支給申請期間が延長
雇用調整助成金の支給申請期間は、実際に休業した日を含む基礎判定期間(賃金の締切期間)の末日の翌日から2ヵ月以内としていました。しかし今回から、1月24日から5月31日までの期間で休業した場合、申請期間を8月31日まで延長することになりました。
(4)賃金締切日の前でも支給申請が可能
雇用調整助成金では、休業手当に関わる賃金の締め切り日以降でないと支給申請ができないこととなっていました。しかし、給与明細の写し等休業手当の額が確定した書類を提出できるのであれば、支給申請ができることとなりました。
(5)オンライン申請が開始?
20日から、オンライン申請受付を開始することになりました。しかし、その当日にシステムの不具合が発生し、延期となりました(再開時期は未定)。
また、オンライン申請が再開したとしても課題があります。雇用調整助成金は5月18日時点で2万4797件の申請があり、支給決定しているのは約半分の1万2201件に留まっています。しかし今回のオンライン申請によって、申請数は更に増加することが見込まれます。その分役所の申請処理スピードに遅れが生じ、支給決定及び実際の支給も遅れてしまう恐れがあります。
国民一律10万円給付の「特別定額給付金」のオンライン申請も、「誤った記載での申請が多い」「役所のチェックがマンパワーのため申請処理が追い付かない」等の要因によって、各地でトラブルが発生しており、オンライン申請を中止する自治体も出てきています。
オンライン上で手続きすることで、現物の書類を用意して窓口や郵送で申請する手間が省け、時間や場所に囚われない申請が可能になります。しかし省庁・自治体のオンライン申請を受け付ける体制が整っているとは言い難いため、オンライン申請と郵送・窓口申請のどちらが良いかは一概に決めかねると言うのが現状です。
以上のように、雇用調整助成金の申請手続きは日が経つにつれ、より簡素化されてきています。その煩雑さから申請を諦めていた方は再度チャレンジしてみてもいいかもしれません。
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株式会社ナビット(https://www.navit-j.com/)
東京都千代田区。「地下鉄乗り換え便利マップ」などを展開するコンテンツプロバイダー。地域特派員5万8100人の全国の主婦ネットワークにより、地域密着型の情報収集を得意とする。
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