注目の助成金(96)特例措置拡大中の雇用調整助成金

2020年に新型コロナウイルス感染症が流行して以来、休業させた従業員の休業手当の一部を支援する雇用調整助成金の特例措置の内容が拡大され続けています。21年8月20日時点では、支給決定件数が426万7043件、支給決定額が4兆2323億7800万円にのぼっています。今回は雇用調整助成金(特例措置)の支給要件と申請方法についておさらいします。

要件満たせば全業種が対象

特例措置の対象期間は20年4月1日~21年9月30日の緊急対応期間の内の賃金締切期間となります。この間に1日でも休業が含まれており、かつ「新型コロナウイルス感染症の影響を受けて生産指標が1ヵ月5%以上減少」という要件を満たせば、全業種の事業主が対象となります。

対象労働者は原則雇用保険に加入した従業員のみとなりますが、雇用保険被保険者でない労働者の休業も「緊急雇用安定助成金」で申請することができます。また、対象となる休業規模は対象労働者の所定労働日数の40分の1以上(中小企業の場合、大企業は30分の1以上)となります。

助成率は原則、中小企業が5分の4、大企業が3分の2となります。なお、従業員を解雇せずに雇用を維持している場合、助成率が中小企業10分の9、大企業4分の3にアップします。さらに、業種や地域によっては特例により、中小企業・大企業も助成率10分の10になる場合があります。

上限額は日額1万3500円。こちらも業種や地域によって、日額1万5千円までアップする場合があります。所属する業種や所在する地域がその特例に含まれているか確認しておきましょう。

支給限度日数は1年間で100日、3年間で150日が原則ですが、それに緊急対応期間中に実施した休業日数が加わります。

他には、通常の雇用調整助成金では必要な計画届が不要になったり、1年間のクーリング期間が撤廃されたり、最低6ヵ月以上の被保険者期間要件が撤廃されたりしています。

上記の要件を満たしていれば、どの業種でも雇用調整助成金を申請することができます。

申請前に休業計画を策定しよう

雇用調整助成金を申請するには、まず労働者を休業させなければなりません。休業期間や休業時間、人数、休業手当などを決めた休業計画を立てます。計画を立てたら、その内容を休業協定書にまとめ、労働組合または労働者の代表と合意します。

そして計画どおりに休業させ、労働者に休業手当を支払います。なお、休業手当は労働基準法で平均賃金の最低60%以上と定められているので注意しましょう。休業日数や休業時間を従業員ごとにタイムカードや出勤簿に記載します。また、休業手当の額を従業員ごとに給与明細や賃金台帳に記載します。これらの書類は支給申請時に提出しますので忘れないようにしましょう。

休業後は、助成金の支給申請書を作成します。支給申請書は、従業員ごとに休業日数、休業手当額等を記入します。助成額は休業手当総額×助成率で計算します。一通り記載出来たら労働局・ハローワークに申請します。提出書類は支給申請書類のほか、休業させ手当を払ったことがわかる書類(出勤簿、タイムカード、賃金台帳、給与明細等)、労働者・役員名簿、休業協定書等も必要となります。申請方法は窓口・郵送・オンラインのいずれかを選べます。申請の審査が済んだ後、指定した口座に助成金が振り込まれます。

教育訓練や出向も対象に

以上が雇用調整助成金の申請要件と申請方法ですが、この助成金は休業以外に教育訓練や出向も対象となります。教育訓練を行った場合、従業員1人1日あたり中小企業2400円、大企業1800円が加算されます。助成率は原則、中小が5分の4、大企業が3分の2ですが、解雇を行わない場合、 中小が10分の9、大企業が4分の3にアップします。出向の場合、上記の緊急対応期間に開始した場合、1ヵ月以上1年以内の出向期間が対象になります。

新型コロナウイルス感染症はまだ収束せず、引き続き多くの事業者に経済的ダメージを与えています。どうしても従業員を休業せざるを得ないことになった場合、迷わず雇用調整助成金を申請しましょう。

    株式会社ナビット(https://www.navit-j.com/)
    東京都千代田区。「地下鉄乗り換え便利マップ」などを展開するコンテンツプロバイダー。地域特派員5万8100人の全国の主婦ネットワークにより、地域密着型の情報収集を得意とする。
    最新の情報は、助成金・補助金の検索サービス「助成金なう」へ
2021年09月02日付2面から抜粋
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2018年12月25日 住宅産業新聞社 編集部

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