新型コロナウイルスの脅威が日に日に増しており、多くの企業の経済活動に多大なる影響を及ぼしています。売上の減少または雇用維持のために、従業員を休業させざるを得ない場合もあります。そこで厚生労働省では、やむを得ず休業した従業員に支払う休業手当を助成する助成金を設けています。今回はこれらの助成金について解説します。
(1)雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた特例)
雇用調整助成金は、新型コロナの影響による事業縮小などを受けて、従業員を休業させざるを得なくなった場合、その休業手当の一部を助成します。通常の雇用調整助成金では、過去1年以内に受給すると申請できませんでしたが、今回はその規制が取り払われます。また、過去の受給日数にかかわらず、今回の支給限度日数から差し引かれません。
1日から6月30日までの休業が対象で、休業等計画届の事後提出も6月30日まで可能となります。助成対象経費は、休業を実施した場合の休業手当、教育訓練を実施した場合の賃金相当額、出向した場合の出向元事業主の負担額となります。
全国の事業主が対象で、事業所設置後1年未満の事業主も含まれます。通常の助成対象労働者は6ヵ月以上継続雇用された従業員が対象ですが、今回は新卒社員など継続雇用期間が6ヵ月未満の労働者も対象となります。また、雇用保険に加入していない労働者の休業も対象になります。
助成額は1人1日当たり最大8330円が支給されます。ただし、助成率は企業規模によって異なり、4/5(中小企業)、2/3(大企業)となります。また、1月24日から実際に休業する判定基礎期間(賃金締切期間)の末日まで従業員を解雇しておらず、なおかつその期間の月平均労働者数と比べて末日の労働者数が4/5以上だった場合、9/10(中小企業)、3/4(大企業)と助成率が引き上げられます。さらに、対象従業員に教育訓練を実施したときは1人1日当たり2400円(中小企業)、1800円(大企業)が加算されます。支給限度日数は、1年間で100日までとなりますが、これに加えて1日から6月30日までの「緊急対応期間」も追加されます。
ただし、「生産指標の確認は提出があった月の前月と対前年同月比で1ヵ月5%以上低下している」という要件があります。一方、雇用数については最近3ヵ月が対前年比で増加していても対象となります。対象となる休業等の延べ日数については、対象労働者に係る所定労働日数の1/40以上(中小企業)、1/30以上(大企業)である必要があります。
申請するには、事業主が指定した1年間の対象期間について、実際に休業する判定基礎期間(賃金締切期間)ごとに計画届の提出が必要です。計画届を事後提出する場合は、1度にまとめて提出しなければなりません。
事後提出しない休業については、初回は休業開始日の2週間前をめどに提出します。2回目以降は、開始日前日までに提出します。最大で3判定基礎期間分の支給申請を同時にできます。なお、支給申請は判定基礎期間終了後2ヵ月以内にする必要があります。
(2)新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応支援金
新型コロナの感染防止のため小学校等(中高、幼稚園、放課後児童クラブ等も含む)が臨時休業している場合、その学校に通う子供を世話するために保護者が休暇を取得した場合、その休暇中に支払った賃金を全額助成します。この助成金は会社の従業員だけでなく、フリーランスの方も対象になります。
対象は、学校が臨時休業となった子どもだけでなく、新型コロナウイルスに感染した、もしくは感染する恐れのある子どもです。また、保護者は両親だけでなく、未成年後見人や里親、祖父母など実際に子供を養っている方も含まれます。事業主は対象の保護者である従業員に有給休暇(年次有給休暇を除く)を取得させた場合、休暇中に支払った賃金相当額を全額支給します。上限額は1日8330円となりますが、賃金が8330円を超える場合であっても全額を支払わなければなりません。また、フリーランスは就業できなかった日について、1日4100円が定額で支給されます。
対象となる休暇は2月27日から6月30日の間に取得したものとなります。また、半日・時間単位の休暇、欠勤・年次有給休暇を事後的に特別休暇に振り替えた場合も対象になります。ただし、日曜日や春休みなど元々お休みであった日は対象外です。
申請期間は6月30日までです。申請書類は雇用保険被保険者とそれ以外の2種類の様式があります。また、事業所単位でなく法人単位で、対象労働者を一度にまとめて申請する必要があります。
各地の学校が休校延長となり、緊急事態宣言も出たことから、今後ますます休業せざるを得ない労働者が増えることが見込まれます。上記の助成金を活用して、新型コロナによる影響を最小限に留めることをおすすめします。
(補助金・助成金の詳細は4月10日現在の情報です)
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