
前回、政府の「デフレ完全脱却のための総合経済対策~日本経済の新たなステージに向けて~(以下総合対策)」に基づき、補助金が変更されていくと説明しました。経済産業省では、この「総合対策」に沿った令和5年度補正予算案を公表しました。これによると、事業再構築補助金とものづくり補助金が大幅に変わるようです。また、新しい補助金も設けられるとのことです。
今回は今後の事業再構築補助金とものづくり補助金、そして新しい補助金について説明します。
まず、事業再構築補助金について説明します。事業再構築補助金は正式名称を「中小企業等事業再構築促進事業」というのですが、それが「中小企業省力化投資補助事業」に変更されます。つまり、「コロナ禍や物価高騰の影響を受けた企業が『事業再構築』によって売上が上がるのを支援する」ではなく、「人手不足や生産性向上のために企業が『省力・省人化』を行うのを支援する」に目的がシフトしたことになります。
その目的に基づく枠として、「省力化投資補助枠(カタログ型)」が新設されます。人手不足解消や生産性向上に資する、即効性がある省力化製品(IoT、ロボット等)を「カタログ」に掲載し、企業が選択して導入できるようにするとのことです。建付けとしては、事務局が認定したソフトウェアしか導入できないIT導入補助金に近しいと考えられます。
補助率は1/2ですが、上限額は従業員に応じて変わります。従業員数5名以下は200万円、6~20名は500万円、21名以上は1千万円となります。また、従業員に対して一定の賃上げを行った場合、上限額を引き上げるとのことです。
「省力化投資補助枠(カタログ型)」は「成長枠(最大7千万円)」等の他の枠と比べて、規模が小さくなっています。なお、他の枠については、来年以降廃止される可能性があります。というのも、事業再構築補助金関連で補正予算案の概要に記載があるのは、「省力化投資補助枠(カタログ型)」のみだからです。また、「企業の思い切った事業再構築の支援については、必要な見直しを行う」という文言も明記されています。上述の通り、事業再構築補助金の目的が「事業再構築」から「省力化」にシフトしたことが反映されていると考えられます。
次にものづくり補助金について説明します。
ものづくり補助金でも「省力化」を目的として、「省力化(オーダーメイド)枠」が設けられます。補助率1/2(小規模事業者・再生事業者は2/3)、最大8千万円が支給されます。通常枠が最大1250万円のものづくり補助金としては非常に額が大きいです。どのような要件になるかはまだ明記されていませんが、省エネまたは人材不足の解消につながる設備投資が対象になると考えられます。
また、「製品・サービス高付加価値化枠」も新設されます。「通常類型」と「成長分野進出類型(DX・GX)」に分かれます。「通常類型」は補助率1/2(小規模事業者・再生事業者は2/3)、最大1250万円ですが、「成長分野進出類型(DX・GX)」は補助率2/3、最大2500万円が支給されます。後者の場合、DX・GXに係る設備投資が対象になると想定されます。ものづくり補助金についても、一定の賃上げ要件を達成した場合、上限額を100万円~2千万円まで引き上げするとのことです。
最後に、新しい補助金「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金(以下成長投資補助金)」について説明します。
成長投資補助金は中小企業・中堅企業が人材不足の解消や持続的な賃上げを実現するために、工場の設置や大規模な設備投資等を行った場合、その費用を補助する制度です。補助率は1/3ですが、上限額は50億円と、非常に規模が大きいです。なお、投資下限額10億円以上と言う要件があり、申請するには相当の資金力が求められます。
上記のように、来年の補助金は大きく変わっていきます。来年も補助金申請を検討している方は、政府の経済対策や各省庁の予算案の動向を随時チェックしておくことをおすすめします。
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