厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金」は、時間外労働削減等の働き方改革に資する取り組みであれば幅広い経費が対象になる大人気の助成金です。
勤務間インターバル(終業から始業までの間に一定の休息時間を設けること)導入を支援する「勤務間インターバルコース」、時間外労働の削減や年休取得を支援する「労働時間短縮・年休促進支援コース」、労務の適正管理を支援する「労働時間適正管理推進コース」が追加されました。
今後より働き方改革を推進するため、内容を大幅拡充するとのことです。そこで今回は「働き方改革推進支援助成金」のおさらい、及び拡充内容について解説します。
◇ ◇
支給対象となる取り組みは、(1)労務管理担当者研修(2)労働者への研修、周知・啓発(3)社会保険労務士、中小企業診断士等専門家によるコンサルティング(4)就業規則・労使協定等の作成・変更(5)人材確保に向けた取り組み(6)労務管理用ソフトウェアの導入・更新(7)労務管理用機器の導入・更新(8)デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新(9)労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新――の9つ。
特に(9)労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新は、時間外労働削減に資することを説明できれば、会計ソフト、キャッシュレス決済、洗車機、自動車リフト等幅広い経費が対象になります。
この9つの取り組みの1つ以上を実施して時間外労働を削減した後、指定の労務関係の取組を行って「成果目標」を達成する必要があります。「成果目標」は各コースで異なります。勤務間インターバルコースは「9時間以上の勤務間インターバルを導入する」等、労働時間短縮・年休促進支援コースは「時間外・休日労働時間数を月60時間以下に設定する」等、労働時間適正管理推進コースは「労務管理書類の保存期間を5年にすることを就業規則等に規定する」等です。これら労務関係の取り組みも事業実施期間中に行う必要があるため、忘れずに実施しましょう。各取り組みについてどのように行うべきか不明な場合は社会保険労務士等の専門家に聞くことをおすすめします。
補助率はどのコースも原則4分の3となります。また、支給額はインターバルコースが最大100万円、労働時間短縮コースが最大200万円、労働時間適正管理推進コースが最大50万円となります。
なお、どのコースも対象事業場の一定数の労働者の賃金額を3%または5%以上引き上げた場合、一定の金額が加算されます。今後はこの加算額が倍増します。たとえば従業員1~3人の賃金を3%以上引き上げた場合、15万円が加算されましたが、今後は30万円になります。また、従業員30人以上に対して5%以上引き上げた場合の加算額は240万円でしたが、今後は480万円となります。政府では「構造的な賃金引上げ」を重点施策として掲げており、その一環としての拡充措置となります。
賃上げした分の金額に関して税制優遇を受けられる「賃上げ促進税制」も併用できます。中小企業であれば、給与等の支給総額の増加分の最大40%について税額控除されます。たとえば、年収300万円の労働者30人の賃金を5%引き上げたとします。その場合、「働き方改革推進支援助成金」で480万円を受給できます。また、「賃上げ促進税制」により300万円×30人×5%×40%=180万円分の税額控除を受けられます。つまり、実質的に660万円分が浮くことになります。
交付申請期間は例年4月1日から11月30日までですが、働き方改革推進支援助成金は例年大変人気があるため、早々に予算が尽き公募終了となる可能性があります。「対象経費について原則2社以上から見積を取得する」等の条件もあるため、提出書類の準備に手間取る場合があります。申請を検討している方は早めの対応を心がけましょう。
記事をシェアする
こんな記事も読まれています
最近の連載
- 注目の助成金(194)「常時使用」と「常時雇用」の違い
- 注目の助成金(193)採択されてもすぐには入金されない!つなぎの資金を確保しよう
- 注目の助成金(192)助成金申請で必須!雇用保険とは
- 注目の助成金(191)補助金申請時に提出が必要な2つの書類
- 注目の助成金(190)「みなし大企業」の定義とは
- 注目の助成金(189)本当に中小企業ですか?大企業との違いとは
- 注目の助成金(188)申請時に提出必須!補助金における見積書のルールとは
- 注目の助成金(187)ZEHの集合住宅の新築を支援
- 注目の助成金(186)電気代削減に役立つ法人向けの空調補助金
- 注目の助成金(185)【東京都知事選】首長によって補助金の傾向が変わる?