
厚生労働省のキャリアアップ助成金はアルバイト等の非正規雇用労働者の処遇改善をした場合に一定額を支給する例年大人気の助成金です。2022年度も各コースで多少の要件変更があります。今回はキャリアアップ助成金の変更点についてご紹介します。
まずキャリアアップ助成金で最も人気が高い「正社員化コース」ですが、大幅な変更があります。正社員化コースは、有期雇用労働者から正社員(1人57万円)、有期雇用労働者から無期雇用労働者(1人28万5千円)、無期雇用労働者から正社員(1人28万5千円)に転換した場合に支給されますが、そのうち「有期雇用労働者から無期雇用労働者」という条件が廃止になります。
また、対象となる正社員の定義も変更となります。現行の条件では「同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者」となっていますが、22年10月1日以降に正社員転換した場合、「『賞与または退職金の制度』かつ『昇給』が適用されていること」という条件が追加されます。非正規雇用労働者についても現行では「6ヵ月以上雇用している有期または無期雇用労働者」ですが、22年10月1日以降の正社員転換では、「正社員と異なる雇用区分の就業規則等の適用を6月以上受けて雇用している有期または無期雇用労働者」という条件が適用されます。正社員化コースの申請を検討している方は就業規則を上記条件に変更する必要があります。なお、正社員転換後6ヵ月の間に賞与や昇給の実績がなくても、その規定が就業規則等で確認できれば支給対象になり得るとのことです。
このように正社員化コースは要件が厳しくなりましたが、要件緩和された箇所もあります。紹介予定派遣労働者として未経験の職業に就き、派遣先の事業所で正社員転換した場合、その転換前の雇用期間が2ヵ月~6ヵ月未満でも支給対象となる特例があります。その特例が21年12月21日以降は、対象労働者の範囲が「コロナの影響による離職者」から「求職者全体」に拡大されています。
次に、非正規雇用労働者のための諸手当制度を導入した場合に助成される「諸手当制度等共通化コース」ですが、名称が「賞与・退職金制度導入コース」に変更されます。昨年度までは賞与・退職金の他に、家族手当、住宅手当、健康診断制度の導入でも対象でしたが、今年度から賞与または退職金の制度新設のみ対象となります。
なお、昨年度までは正社員と同額または同一の算定方法であることが必須でしたが、22年度から必ずしも正社員と共通している必要がなくなります。助成額については、中小小企業の場合1事業所当たり38万円、大企業の場合28万5千円となります。また、賞与・退職金制度を同時に導入した場合、16万円(大企業は12万円)加算されます。
最後に、非正規雇用労働者の週の所定労働時間を延長し、新たに社会保険を適用した場合に助成される「短時間労働者労働時間延長コース」ですが、要件が緩和されます。昨年度までは週の所定労働時間を最低5時間以上延長しなければならなかったですが、22年度以降週3時間以上で良いこととされます。また、22年9月30日までは助成額を増額する措置が取られていましたが、その期間を24年9月30日に延長する予定です。
キャリアアップ助成金に限らず、他の助成金でも多少の要件変更があります。前回申請したからと言って今年度の要項を確認せず申請を進めるのは避けましょう。
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