前回は、2021年度補正予算案のうち、22年度の事業再構築補助金・IT導入補助金について解説しました。今回は、ものづくり補助金と小規模事業者持続化補助金の変更点についてご紹介します。
ものづくり補助金
ものづくり補助金は革新的なサービス・製品開発や生産プロセスの改善に係る取組を支援する補助金です。補助対象者として中小企業・小規模事業者の他に、資本金10億円未満の「特定事業者」、指定のスキームに沿って再生計画を策定する「再生事業者」が加わります。特に再生事業者は通常より補助率をアップし、審査の際に優遇するとのことです。「通常枠」の上限額が現行の1千万円から1250万円にアップします。補助率は中小企業2分の1、小規模事業者・再生事業者が3分の2。さらに、「回復型賃上げ・雇用拡大枠」「デジタル枠」「グリーン枠」も新設されます。
「回復型賃上げ・雇用拡大枠」は、業況が厳しい事業者が賃金アップや雇用の拡大を行うための取組を支援する特別枠です。前年度の事業年度の課税所得がゼロの事業者が対象となり、この特別枠での申請は優先的に採択すると明記されています。上限額は1250万円、補助率は3分の2です。なお、給与支給総額または事業場内最低賃金の増加目標に達しなかった場合、補助金額の全額返還を求められるという厳しい条件があります。
「デジタル枠」はデジタル化に関する取組を支援する特別枠です。デジタル庁が創設されるなど政府はグリーン化と同じくデジタル化の施策も積極的に推進しています。上限額は1250万円、補助率は3分の2となります。この特別枠で申請するには、「補助対象事業がDXに資する革新的な製品・サービス開発や生産プロセスの改善等であること」「経済産業省の『DX推進指標』を利用した自己診断結果を独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に提出すること」等の条件があります。
「通常枠」「回復型賃上げ・雇用拡大枠」「デジタル枠」は従業員規模によって上限額が異なります。従業員数21人以上は1250万円、6~20人は1千万円、5人以下は750万円となります。つまり従業員5人以下の事業者の場合、前回の上限1千万円では申請できなくなります。
「グリーン枠」は上述の事業再構築補助金「グリーン成長枠」と同様、グリーン分野に係る取組を支援します。上限額は2千万円(補助率3分の2)となり、枠の中では最大規模となります。ただし、「グリーン枠」も従業員規模で上限額が異なり、従業員21人以上は2千万円、6人~20人は1500万円、5人以下は1千万円となります。また、「3~5年の事業計画期間内に炭素生産性を年率平均1%以上増加させる」「温室効果ガス排出削減に向けた詳細な取組状況がわかる書面を提出する」等の要件もあります。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は小規模事業者による販路開拓にかかる費用全般を支援する補助金です。通常枠は上限50万円・補助率3分の2ですが、新設の特別枠では上限額・補助率がアップします。
業況が厳しい事業者が賃上げや事業規模拡大に係る取組をした費用を補助する「成長・分配強化枠」という特別枠は上限額が200万円となります。また、条件に合致する赤字事業者であれば補助率4分の3にアップするとのことです。
「新陳代謝枠」は創業者や事業承継者が行う新しい取組を支援する特別枠です。近年問題視されている後継者不足を念頭に置いています。上限額は200万円となります。
小規模事業者がインボイス発行事業者に転換する際の取組を支援する「インボイス枠」も新設されます。「インボイス制度」とは「適格請求書保存方式」のことを指し、どの商品が軽減税率と標準税率のどちらに適用されるか等を明確にすることができ、正確な経理処理が可能になります。インボイス制度は23年10月から開始しますが、それまでの準備を促すために、「インボイス枠」が創設されました。上限額は100万円となります。
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