経済産業省の2022年度第2次補正予算が決定し、さまざまな補助金の拡充が行われることになりました。前回は事業再構築補助金の拡充について紹介しましたが、今回はものづくり補助金の拡充について解説します。
ものづくり補助金は革新的な製品・サービス開発、生産プロセスの改善を支援する補助金です。機械やシステム導入等の設備投資に対して、「通常枠」で申請した場合、補助上限額750万～1250万円(従業員数によって異なる)、補助率1/2(小規模事業者は2/3)の補助額を受給できます。
「特別枠」の場合、さらに大きな上限額・補助率で受給できる可能性があります。その特別枠の1つである「グリーン枠」は、「革新的製品・サービス開発または生産プロセス改善」と「温室効果ガスの削減」を両立させる設備投資を支援します。22年12月現在公募中の「13次締切分」では、補助上限額1千万～2千万円、補助率2/3となっています。
その「グリーン枠」が、今後は温室効果ガスの排出削減の取り組み度合いに応じて、3段階のコース(1)アドバンス(2千万～4千万円)(2)スタンダード(1千万～2千万円、現時点の要件と同じ)(3)エントリー(750万～1250万円)に分かれ、コースによって補助上限額が異なります。また、エントリーコースを今までの要件より緩和し、逆にアドバンスコースを厳しくする等の差別化も行われると想定されます。エントリーコースによって申請のハードルを低くして申請者を増やす一方、アドバンスコースで補助額を増額して脱炭素関連の設備投資を増やすことによって、政府の重点施策である「グリーン成長戦略」をさらに促進させるのが目的と考えられます。 その他の拡充として、「グローバル市場開拓枠」という特別枠が新設されます。もともと「JAPANブランド事業」という海外やインバウンドでの販路開拓を支援する補助金でしたが、今後は「グローバル市場開拓枠」というものづくり補助金の特別枠として再編されます。
補助上限額は3千万円(補助率1/2、小規模事業者は2/3)です。他の枠と異なり従業員数によって上限額が変化することはありません。「JAPANブランド事業」の時は補助上限額500万円(補助率2/3)だったため、補助額が大幅に増額されたと言えます。
グローバル市場開拓枠では、JAPANブランド事業で対象だった海外展開やインバウンドに必要なブランディングやプロモーション等の販路開拓費用だけでなく、事業拡大のための設備投資費用も対象経費に加えることができます。想定される事業として、「海外市場をターゲットにした和風住宅の供給事業を展開するため、海外の展示会に出展する」、「来日外国人が住みやすいように住宅リフォームするサービスを展開するため、リフォームに必要な設備を導入する」等が考えられます。海外展開やインバウンド事業を検討している方はこの新設の特別枠にチャレンジしてみましょう。
そして第3の拡充として、賃上げを行った場合に上限額が上乗せされるようになります。政府の重要施策である「構造的な賃上げ」を促進するために設けられたインセンティブです。
補助対象事業を終了してから3～5年以内に、事業場内最低賃金を年45円以上引上げた場合、最大1千万円が上限額に上乗せされるとのことです。つまり「通常枠」で申請した場合、補助上限額750万～1250万円が1750万～2250万円に増額されることになります。
賃上げを行う予定がある方は、この機会に数千万円の大型設備投資を検討してみるのも良いでしょう。なお、そもそも賃上げが必須要件となっている「回復型賃上げ・雇用拡大枠」は上限額上乗せの対象外となります。
今回紹介した拡充を盛り込んだものづくり補助金は来年以降に公募開始予定です。海外での事業拡大を支援する「グローバル市場開拓枠」、補助額が最も大きい「グリーン枠(アドバンスコース)」等、取り組みたい事業や設備投資に応じて、どの枠で申請するのか検討しましょう。
