アルバイトの正社員転換などを支援する「キャリアアップ助成金」で対象となる事業主は、小売業の場合、「資本または出資額5千万円以下」または「『常時雇用』する労働者50人以下」という条件を満たす必要があります。
一方、時間外労働時間削減に資する設備投資を支援する「働き方改革推進支援助成金」も中小企業事業主が対象となりますが、小売業の場合、「資本または出資額5千万円以下」または「『常時使用』する労働者50人以下」という条件を満たす必要があります。また、労働時間、賃金、人事、服務規律といった労働者の労働条件や待遇の基準を定めた就業規則の作成と届出は、「常時使用」する労働者が10人以上いる事業主に義務付けられています。
上記のように助成金・補助金によって、「常時雇用」・「常時使用」という類似した2つの言葉が使い分けられています。この2つの言葉はどのような点で異なるのでしょうか?
厚生労働省の定義によると、「常時雇用する労働者」とは、「(1)期間の定めなく雇用されている者」または「(2)過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者、または雇い入れ時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者」のいずれかに該当する者をさします。
正社員は期間の定めなく雇用されているため、当然「常時雇用」に該当します。また、パート・アルバイトなど、雇用期間が定められた非正規労働者であっても、1年以上継続して雇用されていれば該当します。雇用契約期間が2ヵ月間であっても、契約を反復更新して事実上1年以上になれば該当します。
ただし、助成金によっては「週20時間以上労働していること」などの要件が追加されている場合があります。また、先述の「キャリアアップ助成金」では、「2ヵ月を超えて使用される者であり、かつ週当たりの所定労働時間が当該事業主に雇用される通常の労働者と概ね同等であること」を「常時雇用」と定義づけています。
一方、「常時使用」とは「労働安全衛生法」によれば、「その事業場で常態として使用していること」を意味します。つまり、事業の通常の運営のために労働者を使用しているのであれば、正社員やアルバイトはもちろん、日雇労働者や派遣先の派遣社員でも「常時使用する労働者」にカウントされます。ちなみに、派遣元の事業場の場合、派遣中の労働者もカウントする必要があります。
また、「中小企業基本法」における「常時使用する労働者」は、「労働基準法第20条に定める解雇予告を必要とする労働者」とされています。つまり、事業の通常の運営のために労働者を使用していても解雇予告を必要としない日雇労働者や派遣先の派遣社員は対象外となります。
このように法律や助成金・補助金によって、「常時雇用」・「常時使用」の定義が微妙に異なってきています。
助成金・補助金の公募要領では、「常時使用」の方が多く用いられています。厚生労働省の助成金または自治体の雇用・労務関係の助成金であれば「労働安全衛生法」における定義、中小企業庁の補助金または自治体の事業関係の補助金であれば「中小企業基本法」における定義が原則となります。
なお、「キャリアアップ助成金」のように独自の定義を用いているものもあるため、中小企業診断士や社会保険労務士などの専門家にも確認しつつ、その都度正確にカウントできるようにする必要があります。
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