注目の助成金(192)助成金申請で必須!雇用保険とは

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アルバイトを正社員に転換すると一定額を受給できる「キャリアアップ助成金」など、厚生労働省の雇用関係の助成金では、対象となる労働者は原則「雇用保険」に加入する必要があります。しかし、誰でも雇用保険に加入できる訳ではありません。今回は雇用保険について解説します。

雇用保険は政府が管掌する強制保険です。労働者を雇用している場合、強制的に適用されます。雇用保険料は会社、労働者それぞれが分担して支払います。支払われた雇用保険料は労働者の雇用の安定または労働者が失業した場合の就職支援などのために行う施策に用いられます。

たとえば、労働者が失業して収入がなくなった場合に支給される失業等給付、労働者が子を養育するための休業をした場合の生活費用を援助するための育児休業給付、労働者が就職またはキャリアアップのために一定の研修を受ける際の費用を給付する教育訓練給付などがあります。

それらは労働者自身が申請するものですが、会社が申請するものとして「助成金」があります。厚生労働省の助成金は労働者の雇用環境・職場環境の改善のための制度です。雇用保険料が財源となるため、それを支払っている労働者=雇用保険の被保険者が対象となるのは当然です。

雇用保険料は「給与額(賞与額)×労働者負担の雇用保険料率」で計算されます。雇用保険料率は「一般の事業」「農林水産・清酒製造の事業」「建設の事業」の3つにわけられ、定期的に見直されています。「一般の事業」であれば、労働者は1千分の6、会社は1千分の9・5が雇用保険料率となります(令和6年度)。

会社で働いていれば誰でも雇用保険に加入できるわけではありません。「1週間の所定労働時間が20時間以上であること」、「31日以上の雇用見込みがあること」という要件を満たす必要があります。つまり、週30時間働いていても雇用期間が20日間だけであれば雇用保険に加入できません。また、1年以上雇用されていても週10時間しか働いていない場合も対象外です。上記条件を満たせば、パートやアルバイトなどの有期雇用労働者でも雇用保険に加入できます。

一方、季節的に雇用される労働者は「4ヵ月を超える期間を定めて雇用されること」、「1週間の所定労働時間が30時間以上であること」を満たす必要があるなど、他と異なる条件が設定されている場合もあります。また、取締役や役員は労働者ではないため、原則雇用保険に加入できません。

厚生労働省の助成金は、労働者が雇用保険に加入できる条件を満たしていても、申請できない場合があります。その労働者が雇用保険の被保険者になる旨を会社がハローワークに届け出ていない場合です。労働者を1人でも雇用していれば、会社側と労働者側の意思、その業種、資本金規模などに関係なく、会社は強制的に雇用保険の適用事業主となり、労働保険料の納付、雇用保険法に基づく各種届出などの義務を負わされます。そのような義務を会社が果たしていない場合、助成金の申請ができないどころか、失業した労働者が給付を受給できない恐れもあります。

新たに雇用保険の被保険者になった労働者がいる場合、会社は被保険者となった日の翌月10日までに「資格取得届」を提出しなければなりません。ハローワークで確認がなされると、「雇用保険被保険者証」と「雇用保険資格取得等確認通知書」が交付されます。

ちなみに退職する場合、退職者が「雇用保険被保険者離職票」を希望したら、会社はハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を提出しなければなりません。期限は退職日の翌々日から10日以内です。

雇用保険について適正な届け出や手続きをしなければ、助成金を申請できない恐れがあります。社会保険労務士などの専門家にチェックしてもらうことをおすすめします。

2024年10月22日付6面に掲載
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2018年12月25日 住宅産業新聞社 編集部

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