
2023年度になり、さまざま制度が開始したり、変更されたりしました。その中でも大きなトピックとして「出産育児一時金の増額」が挙げられます。
出産育児一時金は、子どもを産んだ家庭に対して、子ども1人につき一時金を支給する制度でした。23年度になり、その支給額が42万円から50万円に増額されました。
政府では、地方で特に際立つ少子化傾向及び都市部を中心とした出産費用の増加傾向を踏まえて、「異次元の少子化対策」を掲げ、23年4月に「こども家庭庁」も立ち上げました。出産育児一時金の増額はその過程で実施される施策となります。
今回は出産育児一時金の要件について解説します。
◇ ◇
出産育児一時金の対象者は、健康保険の被保険者及びその被扶養者です。また、対象となる出産は「妊娠4ヵ月(85日)以上の出産」です。なお、この「出産」には、早産・死産・流産・人工妊娠中絶も含まれます。
支給額は子ども1人につき50万円です。多胎児を出産したときは、胎児数分だけ支給されます。つまり、仮に三つ子を産んだ場合は、150万円分の出産育児一時金が支給されることになります。なお、妊娠22週未満の出産、または「産科医療補償制度」の加算対象外である場合、1人につき48万8千円に減額されます。「産科医療補償制度」とは、分娩時の何らかの理由により、子どもが脳性まひ等の一定の障害状態となった場合の補償制度です。
出産育児一時金の受取方法は「直接支払制度」を利用するかどうかで分かれます。「直接支払制度」は出産先の医療機関が被保険者に代わり、出産育児一時金の申請および受取を行う制度です。
この制度を利用した場合、被保険者は直接手続きを行う必要はありません。出産費用が出産育児一時金の支給額を超えた場合、その分を医療機関へ支払わなければなりません。
逆に制度を利用しない場合、出産費用全額を医療機関へ支払わなければなりませんが、後で出産育児一時金を申請することも可能です。出産育児一時金を受給する権利は、出産日の翌日から起算して2年を経過すると消滅するため、それまでに申請する必要があります。
出産費用の支払いが難しい場合は「出産費貸付制度」を活用できます。この制度は、出産育児一時金の支給までの間、出産育児一時金の8割相当額を限度として、出産費用に充てるための資金を無利子で貸し付ける制度です。なお、対象者は出産予定日まで1ヵ月以内の方、または妊娠4ヵ月以上で医療機関等に一時的な支払いを要する方に限ります。
健康保険被保険者の資格を失った方でも出産育児一時金を受給できる場合があります。資格喪失日前1年間に3ヵ月以上、または3年間に1年以上強制加入者であり、かつ資格喪失後の6ヵ月以内の出産であれば、出産育児一時金が支給されます。
出産育児一時金の増額は子育て世帯にとっては喜ばしいことですが、その増額分の財源は「後期高齢者医療制度」に加入する75歳以上の高齢者の保険料から捻出するとのことです。
後期高齢者医療制度の加入者は所得等に応じて保険料を支払っていますが、その上限額が24年度及び25年度に段階的に引き上げられます。23年度時点では上限66万円ですが、24年度は上限73万円、25年度は上限80万円に引き上げるとのことです。
また、自治体によっては独自の子育て支援策を実施しているところもあります。お住いの自治体でどのような支援が行われているかHP等で確認してみましょう。
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株式会社ナビット(https://www.navit-j.com/)
東京都千代田区。「地下鉄乗り換え便利マップ」などを展開するコンテンツプロバイダー。地域特派員5万8100人の全国の主婦ネットワークにより、地域密着型の情報収集を得意とする。
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