
緊急事態宣言が解除され、多くの企業は事業再開をしており、景気も今後徐々に回復していくと考えられます。しかしそれでもなお、新型コロナウイルス感染症の影響による経済的ダメージが大きく、休業を継続したり倒産したりする企業も少なくありません。日本政策金融公庫では、コロナ禍により売上が減少した中小企業に対して、無担保・(実質)無利子の融資を行っています。今回はこの「新型コロナウイルス感染症特別貸付」について解説します。
対象は売上が5%以上減った中小企業
まず融資を受けられる対象者は直近1ヵ月の売上が前年同月で5%以上減少している中小企業です。前年同月比が基準を満たさなかった場合は、前々年同月比の数値を用いることができます。また、「直近1ヵ月の売上」について、「前月の売上高」だけではなく「直近の売上集計日から遡って1ヵ月の売上高」も用いることができます。なお、創業して3ヵ月以上1年1ヵ月未満の企業は、「直近1ヵ月を含む過去3ヵ月の平均売上高」「前年12月の売上高」「前年10月~12月の平均売上高」のいずれかと比較すればよいとのことです。
資金用途はあくまで新型コロナウイルス感染症の影響を原因とした設備資金及び長期運転資金です。申請後に担当者と面談することになるのですが、その際に資金の使い道や事業の近況が新型コロナと関連があることを説明する必要があります。
融資限度額は直接貸付3億円となり、無担保となります。利率は原則、日本政策金融公庫の基準利率によります。なお、融資額が1億円以下の場合は当初3年間だけ基準利率マイナス0・9%となります。
しかし、「特別利子補給制度」を利用すれば実質無利子にすることができます。
特別利子補給制度では、直近1ヵ月を含む過去3ヵ月のいずれかの売上が20%以上減少し、かつ融資額が1億円以下である中小企業を対象にして、借入後当初3年間の利子(基準利率マイナス0・9%)を補給します。この制度は5月28日現在ではまだ検討段階であり、公募は始まっていません。返済期間は設備資金20年以内(据置5年以内)、運転資金15年以内(同)となります。
申込の流れとしては、まず公庫各支店の中小企業事業の窓口に相談します(電話相談も可)。相談の上で必要書類を揃え、窓口または郵送で提出します。その後、担当者と面談し、資金の使い道や事業の状況等をヒアリングされ、融資すべきかどうか判断されます。そして融資が決まると、契約手続きが行われ、送金がなされます。
申請時の提出書類は借入申込書、法人の登記事項証明書(原本)、代表者個人の印鑑証明書、納税証明書(原本)、最近3期分の税務申告書・決算書、最近の売上高が把握できる資料(試算表や売上台帳等)となります。必要に応じて、会社概要等の資料を求められる場合もあります。また、設備資金の融資を希望する場合は、見積書も提出する必要があります。
セーフティネット貸付の検討も
この「新型コロナウイルス感染症特別貸付」は売上が5%以上減少していないと申請することができません。しかし現在売上が減少していなくても、今後資金繰りの悪化が見込まれる企業は少なくありません。そのような企業に対して日本政策金融公庫では「経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)」を用意しています。
対象者の範囲は、売上が減少している企業だけではなく、「得意先との取引条件が悪化した」「コロナ禍の影響で資金繰りに支障をきたす恐れがある」「利益は増加したが、繰越欠損金が大きい」等、新型コロナウイルス感染症特別貸付より幅広くなっています。
融資限度額も7億2千万円と大きいですが、担保や経営責任者の個人保証を求められる場合があります。また、利率は日本政策金融公庫の基準利率によりますが、利率を下げたり、利子補給したりすることはありません。返済期間も設備資金15年以内(据置3年以内)、運転資金8年以内(同)と、新型コロナウイルス感染症特別貸付よりやや短縮されています。
このように新型コロナ対策のための融資がいくつも公募されていますので、自社の状況に合わせて積極的に活用することをおすすめします。
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株式会社ナビット(https://www.navit-j.com/)
東京都千代田区。「地下鉄乗り換え便利マップ」などを展開するコンテンツプロバイダー。地域特派員5万8100人の全国の主婦ネットワークにより、地域密着型の情報収集を得意とする。
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