注目の助成金(34)中小企業に重要、「経営革新計画」と「経営力向上計画」

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中小企業庁では、中小企業に対して「経営革新計画」の策定をするよう促しています。

経営革新計画とは、経営力や生産性向上を図ることを目的に、新規の事業活動に関する実現性のある数値目標を定めた経営計画書です。計画を策定するメリットは計画と実績の差違を検証できることです。

計画通りいかなかったのは、急激な環境の変化によるものなのか、社内の努力が足りなかったのかなど課題が明確になり、対策を打ちやすくなります。

しかし、中小企業ではそのような計画書を作っているところは多くありません。具体的な計画がなければ、利益や経営状態、将来のビジョンを正確に把握することができず、有効な施策が打てなくなります。そのため、中小企業庁は「経営革新計画を策定させる」という形で、中小企業の経営力・生産性向上を促そうとしているのです。

今回はこの経営革新計画について、前回紹介した「経営力向上計画」との違いも踏まえつつ解説していきます。

2つの計画の違いは?

経営革新計画も経営力向上計画と同じく中小企業等経営強化法に基づいていますが、いくつか相違点があります。

まず、最も大きな違いが計画の策定目的です。

経営革新計画は中小企業が新規事業や新分野進出に取り組み、生産性や経営力向上を図ることを目的に策定されるものです。そのため、申請する際には取り組む予定の事業がどれだけ革新性があるのかを説明する必要があります。一方、経営力向上計画は人材育成、財務内容の分析などを通して、自社の経営力を向上することを目的に策定されるものです。

そのため、申請する際に事業の革新性や新規性を説明する必要は必ずしもありません。

どちらの計画もきちんと策定することで現状の課題が明確になるなどの効果が期待できます。

次に、経営革新計画と経営力向上計画は計画を承認/認定する機関が異なります。経営革新計画は「事業所が所在している都道府県の知事」が承認します。一方、経営力向上計画は「事業分野を主管している省庁の大臣」が認定します。

また、受けられる優遇にも差異があります。

経営革新計画は、

(1)保証・融資
―――信用保証の特例、日本政策金融公庫の特別利率による融資、高度化融資制度、食品流通構造改善促進機構による債務保証
(2)海外展開に伴う資金調達
―――スタンドバイ・クレジット制度、中小企業信用保険法の特例、日本貿易保険による支援措置
(3)投資・補助金
―――企業支援ファンドからの投資、中小企業投資育成会社からの投資、ものづくり補助金などの優遇措置
(4)販路開拓
―――販路開拓コーディネート事業、新価値創造展への出展優遇
(5)特許関係
―――特許関係料金減免制度

という5つの優遇を受けられます。

経営力向上計画が税制面・金融面・法律面で幅広く支援を行っているのに対し、経営革新計画では金融や販路開拓での支援に重きを置いています。

ちなみに、今年公募されたものづくり補助金(平成30年度補正予算「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」)では、経営革新計画が承認されると、「18年12月21日の閣議決定後に新たに申請して認定または承認を受けた場合、補助率を3分の2にアップする」という優遇がありました。

一方、経営力向上計画が認定されると、「特定非営利活動法人は交付決定時までに対象事業に関する経営力向上計画の認定を受ければ、単体で申請することができる」という優遇がありました。省庁や各自治体で公募されている補助金の中には、補助率アップや審査の際の加点要素など、経営革新計画による優遇措置を設けているものが多いです。そのため、補助金申請をするのであれば、合わせて経営革新計画の承認も目指すことをおすすめします。

経営革新計画も経営力向上計画も細かい差異はあるものの、承認/認定されれば多くの優遇を受けられます。しかし、どちらも主たる目的は自社の生産性向上や経営改善にあります。中小企業診断士や経営革新等支援機関などの専門家・専門機関にチェックしてもらいつつ、本当に役に立つ経営革新計画と経営力向上計画の策定に取り組みましょう。

    株式会社ナビット(https://www.navit-j.com/)
    東京都千代田区。「地下鉄乗り換え便利マップ」などを展開するコンテンツプロバイダー。地域特派員5万8100人の全国の主婦ネットワークにより、地域密着型の情報収集を得意とする。
    最新の情報は、助成金・補助金の検索サービス「助成金なう」へ
2019年10月10日付6面に掲載
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2018年12月25日 住宅産業新聞社 編集部

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