2018年、19年は、台風や地震などの災害により、多くの地域で甚大な被害を受けました。地震、台風、大規模なシステム障害などはいつ起こるかわかりません。災害が発生した場合、事業を継続させることが困難になります。
そのため、将来巻き込まれるかもしれない災害に対して、あらかじめリスクを最小化し、被災しても直ちに事業再開できるよう取り組む必要があります。
そこで、経済産業省及び中小企業庁では、災害などのリスクに備えた事前対策に関する「事業継続力強化計画」の策定を中小企業に対して奨励しています。今回はこの「事業継続力強化計画」について解説します。
東日本大震災以前は、多くの経営者の間で「在庫は悪」という考えがありました。在庫が積みあがれば、不良在庫のリスクや運転資金の増大化をもたらすため、キャッシュフローの観点からはマイナス要素になります。そのため、「できるだけ在庫を圧縮させることが正しい経営」とされてきました。
しかし、東日本大震災によってほとんどの企業の物流や製造機能がマヒし、需要への対応ができなくなくなり、「在庫は悪」という経営のぜい弱さを露呈しました。そして、多くの企業は「在庫は悪」という考え方から脱却し、「災害に備えた在庫」という考えを持つようになりました。
在庫は「悪」から「災害への備え」に
「災害に備えた在庫」が主流になりつつあることを背景にして、経済産業省では、中小企業が積極的に防災・減災の事前対策に関する計画「事業継続力強化計画」を作り、それを経済産業大臣が認定する制度をつくりました。
「事業継続力強化計画」の中身は、(1)企業の概要(連携型の場合は連携企業の概要)(2)自然災害が事業活動に与える影響の認識(被害想定等)(3)初動対応の内容(4)事前対策の内容(5)事前対策の実効性の確保に向けた取り組み――となります。
申請書作成に当たり、中小企業庁では、(1)事業継続力強化の目的の検討(地域経済への貢献、従業員に対する責務など)(2)災害リスクの確認・認識(ハザードマップの活用など)(3)初動対応の検討(人命の安全確保など)(4)人、物、カネ、情報への対応(設備の耐震化、保険の加入など)(5)平時の推進体制(定期的な防災訓練実施など)――のステップを踏まえて検討することを奨励しています。
「事業継続力強化計画」が認定されると、「経営革新計画」や「経営力向上計画」と同じくさまざまな優遇措置を受けられます。税制面では、防災・減災関連等設備の取得価額について20%の特別償却がなされます。金融面では、日本政策金融公庫による低利融資、信用保証枠の拡大など資金調達に関する支援を受けられます。さらに、ものづくり補助金などの一部の補助金において審査の加点要素となります。次年度の補助金申請を検討しているのであれば、公募が始まる前までに「事業継続力強化計画」を取得しておくことをおすすめします。また、一部の損害保険会社や共済団体では中小企業庁と連携して、保険料の割引などを行っています。
しかし「事業継続力強化計画」の本来の目的は優遇を受けることではなく、あくまで災害が発生してもすぐ立ち直ることができる体制を整備することにあります。
中小企業庁では、中小企業の防災・減災対策などに詳しい専門家を派遣して計画策定を個別支援する制度を設けています。それを活用したり、中小企業診断士のアドバイスを仰いだりしながら、本来の目的に沿った「事業継続力強化計画」の策定を目指しましょう。
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株式会社ナビット(https://www.navit-j.com/)
東京都千代田区。「地下鉄乗り換え便利マップ」などを展開するコンテンツプロバイダー。地域特派員5万8100人の全国の主婦ネットワークにより、地域密着型の情報収集を得意とする。
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