
――ZEHは国際的な取り組みと連動する
小山 世界の196ヵ国が参加したパリ協定で決めたのは、今世紀後半に世界中の温室効果ガスの排出をゼロにするということ。それは石油・石炭・ガスを燃やさない社会に、およそ50年後には移行するということ。その観点では、住宅は省エネだけでは足りず既築を含めてゼロエネが必要ということになる。
ZEHに関しては、機器偏重だ、断熱性能が甘い、日本伝統の寄棟屋根がなくなる、といった建築的な議論や、補助金頼みは良くない、あるいは住文化が制約を受けるといった反対意見もある。
住宅政策によって豊かな住文化をつくろうとしてきた人たちにとっては、ある日突然ZEH施策が現れ、抵抗があるのは当然だ。しかし、ZEHは住宅政策というよりも「環境エネルギー政策」だ。
環境エネルギー政策の観点で、未来の豊かな暮しを守るために私たちの孫子の代の次の世代、もしくは次の次の世代の豊かな暮しを守るために、私たちの世代が取り組むべき課題だ。
課題は生活者の知識不足
――地域工務店のZEH率上昇の課題は
小山 お客様の住宅の省エネに関する知識やニーズが顕在化していない。ユーザー側が求め始めたら、工務店も提案する。ユーザーが求めないので、安いほうがいいとかデザインとか他の要素を求めることになる。例えばBELSの政策的な普及は大事だと思う。
これは想像だが、年度末に補正予算でエコポイントができて、それにBELSが入ればいいと思っている。消費者にとって「省エネ」が重要なモノサシにならないと、また経済的なメリットにならないとZEHは普及しない。
車を例にすると、昔はカローラが一番売れていた。今はプリウスがよく売れている。最初は少し高くても、車をある程度利用する人にとっては、結果的には割安になることがわかったからこそ売れている。ZEHも同じ話。ZEHにした方が、10年ぐらいで得になるということが一般化していけば、広がるだろう。
――そうなった時の工務店の対応が重要となる
小山 技術的には難しい話ではなくて、断熱の予算を取ったり、設備のグレードを上げたり、太陽光発電システムを載せたりすればいい。ただ、予算を取るという「提案」の習熟を深めていくことが大事だ。そのために建産協(日本建材・住宅設備産業協会)でZEHの専門分科会をつくってもらって、全国の住宅事業者向けのZEH研修会を組織的にやってもらうプロジェクトが進んでいる。
ZEHが普及するということは、設備もハイスペックになることが必要だし、断熱材も重要。サッシもいいものが求められる。建産協と連携してJBN会員のみならず日本の工務店業界全体のZEH対応スキルを引き上げたい。
【日本建材・住宅設備産業協会/ZEH普及分科会】
板硝子協会、日本サッシ協会と、エネギー・環境委員会所属のエネルギー企画・普及部会の中の5社で構成する。
今秋9月から17年3月にかけてセミナーを実施予定。開催地(予定)は、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡(札幌が含まれる可能性がある)。
各会場とも約100人規模。現在、セミナーの内容の詳細を検討中。同分科会はJBN・ZEH委員会からの依頼によって15年3月末に創設。断熱材からサッシ、住宅設備まで一気通貫でZEH仕様のガイドライン作成を目指す。建産協は「平成25年省エネ基準」への改正時から外皮基準の高度化を要望していた。
今回、経産省によって設けられたZEHでは外皮基準が強化されており、断熱性能向上を普及させたいとする建産協の同部会との方向性が一致、ZEH普及分科会設置に至った。