
補助金申請においては、事業内容そのものの魅力や目的の妥当性だけでなく、「申請する経費が事業計画とどれだけ密接に関係しているか」が重要な評価ポイントとなります。補助金はあくまで公的資金であり、その支出には明確な根拠と合理性が求められるためです。
◇ ◇
まず意識すべきは、「補助対象経費=事業達成に不可欠な支出」であるという前提です。経費の性質が事業の目的や内容と直結していない場合、審査員から「必要性が低い」と判断され、不採択になる恐れがあります。
たとえば、省エネ補助金で「社内イベント費用」や「通常の事務用品購入費」を計上すれば、その関連性の薄さから大幅な減点を受けます。逆に、「高効率空調の導入費」や「エネルギー消費削減システムの設計費」といった、目的達成に不可欠な経費であれば、評価は高くなります。
また、補助金には「補助対象経費」と「対象外経費」が明確に区分されているため、公募要領を熟読し、自社の計画に必要な経費が対象範囲内に含まれているかを事前に確認することが不可欠です。
たとえば、建物の新築や土地購入は多くの制度で対象外となり、消耗品費や日常的な経費も除外されるケースが少なくありません。対象外の経費を申請してしまうと、審査の印象を損なうばかりか、申請そのものが失格となる場合もあります。
さらに、補助対象経費の「金額の妥当性」も、事業内容との直結性を示すうえで重要な要素です。市場価格に比べて極端に高額な見積もりや、事業規模に対して過大な設備投資計画は、「費用対効果が低い」と判断されやすくなります。補助金によっては金額の妥当性を確認するため、複数社からの相見積の提出を求めていますが、そうでない場合でも、対象製品と同種の製品カタログなど適正な市場価格であることが客観的にわかる書類を添付しておくことが望ましいです。
「計画⇒活動⇒経費」の流れを意識
経費と事業内容の直結性を高めるには、「事業計画→必要な活動→必要な経費」という論理の流れを崩さないことが大切です。たとえば、新規顧客開拓を目的とした事業であれば、「展示会出展」「パンフレット作成」「Web広告出稿」といった経費は目的に直結していますが、「社内休憩室の改装」や「汎用的なオフィス家具の購入」は直接的な関係が薄くなります。このような関連度の低い経費も申請したい場合は、「間接的な効果」や「事業実施上の必要性」を論理的に説明し、審査員の理解を得る工夫が必要です。
また、事業計画書の構成上、経費を表形式で示すだけでなく、本文の中でも自然に触れることが効果的です。事業の流れを説明する中で、「この工程では○○機器を導入し、これにより○○の成果が見込まれます」と具体的に書くことで、経費が事業の一部として機能していることを強調できます。審査員が事業内容を読み進めながら経費の必要性を理解できれば、全体の印象は格段に向上します。
最後に注意すべきは、「経費削減を目的とした安易な申請」は避けることです。補助金はあくまで新たな取り組みや高度化のための後押しを目的としており、単に通常業務にかかる経費を軽減するための申請は評価されにくくなります。そのため、「この経費は事業の成果創出に不可欠であり、補助金がなければ実行が難しい」というストーリーを、一貫性をもって記載することが求められます。
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補助対象経費と事業内容の直結性は、補助金審査における信頼性の核心部分です。経費の種類・金額・必要性を明確にし、事業目的との関係性を具体的かつ論理的に説明することで、審査員に「この経費は適切であり、事業成功のために欠かせない」と納得してもらうことが可能になります。この視点を徹底すれば、採択の可能性は確実に高まります。
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