近年雇用の流動化が進み、人材育成をしてもすぐ転職してしまう場合があります。
どの企業でも、人材を育てるより即戦力を求める傾向が強くなってきています。しかし、人材育成に力を入れなければ、育成されていないままの人材が増え、国内全体の労働生産性が減少する恐れがあります。そこで厚生労働省では人材開発支援助成金を公募して、従業員の職業訓練に要する経費を助成しています。人材開発によって労働者の質を向上させることで、労働生産性の向上につなげることが目的です。
今回はこの人材開発支援助成金について紹介します。
要件満たせばどの企業でも申請可能
人材開発支援助成金は要件さえ満たせば原則どの企業でも申請することができます。特に、資金不足により人材育成に力を入れにくい中小企業にとってはありがたい助成金と言えます。
対象となる職業訓練は、対象労働者の業務に直接関係しなくてはなりません。教養レベルのもの、一般的なビジネスマナー研修、学会や講演会等の訓練とは言えないものは対象外となります。対象となる労働者は雇用保険の加入者であり、対象となる実訓練時間の8割以上を受講しなければなりません。
人材開発助成金には複数コースがありますが、ここでは特に人気が高い「特定訓練コース」と「一般訓練コース」について紹介します。
特定訓練コースは「OFF-JTのみ」と「OJTとOFF-JTの組み合わせ(雇用型訓練)」に分かれます。「OFF-JTのみ」の場合、10時間以上のOFF-JTが必要です。また、対象となる訓練は「労働生産性向上訓練」、「若年人材育成訓練(雇用契約締結後5年経過せず35歳未満の者を対象とする訓練)」、「熟練技能育成・承継訓練」、「グローバル人材育成訓練」のいずれかに該当しなければなりません。
「OJTとOFF-JTの組み合わせ(雇用型訓練)」も10時間以上の訓練が必要であり、厚生労働大臣の認定を受けた訓練(認定実習併用職業訓練)と、その訓練の中でも建設業・製造業・情報通信業に関連する訓練(特定分野認定実習併用職業訓練)に分かれます。
助成額は、OFF-JTの場合、賃金に対する助成と経費に対する助成に分かれます。賃金助成は1人1時間につき760円(大企業は380円、上限原則1200時間)、経費助成は対象経費の45%(大企業は30%)です。なお、経費助成の上限は訓練時間によって変わり、10時間以上100時間未満は15万円(10万円)、100時間以上200時間未満は30万円(20万円)、200時間以上は50万円(30万円)です(カッコ内は大企業)。そしてOJTの場合、1人1時間につき665円(大企業は380円、上限680時間)の賃金助成となります。
一般訓練コースはOFF-JTのみが対象となり、特定訓練コースの対象訓練に該当しないものが対象となります。また、訓練時間は20時間以上必要です。
助成額は、賃金助成1人1時間につき380円(上限原則1200時間。経費助成は対象経費の30%)となります。そして経費助成の上限は訓練時間20時間以上100時間未満は7万円、100時間以上200時間未満は15万円、200時間以上は20万円です(大企業も同じ上限額)。
受給できる上限額に注意
なお、どのコースも1労働者が受講できる訓練は、年間職業能力開発計画期間内に3回までとなります。また、1事業所が1年度に受給できる上限額は、特定訓練コースを含む場合は1千万円、一般訓練コースのみの場合は500万円です。
一般訓練コースより特定訓練コースの方が助成額が高いため、よほど必要な訓練でない限りは特定訓練コースの申請をおすすめします。
人材開発支援助成金は原則どの企業でも申請できますが、訓練計画届を提出する前日の6ヵ月前から支給申請提出日までに会社都合で従業員を離職させた場合、申請ができない点に注意しましょう。
また、新型コロナウイルス感染症の影響により訓練が中止になった場合、「天災等のやむを得ない事態」と判断されます。既に受講した分の訓練時間と行えなかった分の訓練時間の合計時間が、実訓練時間の80%以上であれば、実際に負担した分の経費助成と賃金助成が支給されます。
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株式会社ナビット(https://www.navit-j.com/)
東京都千代田区。「地下鉄乗り換え便利マップ」などを展開するコンテンツプロバイダー。地域特派員5万8100人の全国の主婦ネットワークにより、地域密着型の情報収集を得意とする。
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