注目の助成金(190)「みなし大企業」の定義とは

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一定の資本金額または常時使用する労働者の数を下回る企業が「中小企業」とされます。また、逆にどちらの数も上回った企業が「大企業」とされます。なお、企業によっては資本金も労働者数も「中小企業」の要件を満たしているにもかかわらず、「大企業」とみなされてしまう企業もあります。いわゆる「みなし大企業」です。「みなし大企業」と判断されると、中小企業が対象となる補助金の申請対象外となってしまいます。

みなし大企業は中小企業基本法上では明確な規定があるません。個々の補助金の公募要領で定義されています。たとえば、中小企業庁の「ものづくり補助金」では、(1)「発行済株式または出資価格の2分の1以上を同一の大企業が所有」(2)「発行済株式または出資価格の3分の2以上を大企業が所有」(3)「大企業の役員または職員を兼ねている者が役員の2分の1以上」のいずれかの要件を満たした場合、「みなし大企業」と判断されます。

中小企業A社の株式の2分の1以上を大企業B社が所有していれば、A社はみなし大企業です。また、B社の株式保有数が2分の1未満でも、大企業C社の株式保有数と合わせて3分の2以上になれば、みなし大企業となります。

A社の役員の2分の1以上がB社・C社の人間だった場合もみなし大企業です。つまり、子会社やグループ会社のように、大企業に実質的な経営権を握られている企業が「みなし大企業」と判断されることになります。「ものづくり補助金」以外の補助金でもだいたい上記のような判断基準となります。

みなし大企業が実質的な経営権を握っている中小企業も「みなし大企業」と判断されます。

たとえば、中小企業A社が中小企業B社の子会社だった場合、A社は中小企業のままです。しかし、B社が大企業C社の子会社だった場合、A社は大企業の子会社の子会社、つまり孫会社となるため、「みなし大企業」と判断されます。

みなし大企業はほとんどの補助金で申請対象外となります。しかし、申請できる場合もあります。たとえば、従業員の仕事と育児休業・介護休業の両立のための体制作りを支援する、厚生労働省の「業務改善助成金」では中小企業のみを対象とする規定がありますが、みなし大企業を除外する旨の規定はありません。つまり、みなし大企業でも申請ができます。他の多くの厚生労働省の助成金も同様に申請できます。

また、東京都の「魅力ある職場づくり推進奨励金」では中小企業の定義が「常時雇用する労働者数が300人以下」とされており、それさえ満たせばみなし大企業でも申請できます。

このように、労務や雇用関連の助成金であれば、みなし大企業でも申請できる場合が多いです。

大企業が申請できる補助金は当然みなし大企業も申請できます。このタイプの補助金の多くは対象者について「国内で事業活動を営んでいる法人」などと規定しているだけであり、原則どんな規模の法人でも申請できます。

補助金を申請する際は、常時使用する労働者数や資本金だけでなく、自社の株式保有者や役員を確認しておくことをおすすめします。また、補助金によってはみなし大企業も対象になる場合があるため、補助金の公募要項に記載されている「補助対象者」の要件をチェックしておくこともおすすめします。

2024年09月17日付6面に掲載
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2018年12月25日 住宅産業新聞社 編集部

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