補助金は採択されてもすぐに入金されるわけではありません。採択後に事業を実施し、その実績報告を行った上でようやく入金がされます。つまり、事業を実施する際の経費は全て自分で用意しなければなりません。
この補助金が入金されるまでの「つなぎの資金」を確保できず、事業を断念してしまう企業は少なくありません。また、つなぎの資金について事業計画で適切に説明できず、不採択となる企業も少なくありません。
補助金が支給されるのは、補助事業が終わってからさらに数ヵ月先になります。それまではすべて持ち出しになります。そのため、事業計画では「その間のつなぎ資金をどのように確保するのか」ということに明確に答えられなくてはなりません。
今回はこのつなぎの資金について解説します。
補助金の審査員は事業そのものの内容だけでなく、決算書等の提出書類を通じて、現状の財務内容や収益力も審査します。現事業で法人税をしっかり納税できるだけの収益を上げており、なおかつ借入をすぐにできるだけの信頼関係を金融機関と築けている企業はもちろん「問題なし」と判断されます。
しかし、赤字が数期連続で続いており債務超過に陥っているような企業はそういうわけにはいきません。「この企業に新規事業をやる余裕はない。まずは本業の立て直しを優先すべきだ」とみなされ、採択されない可能性が高いです。
債務超過の企業では金融機関からの借入も難しいです。その場合は、「なぜ現在債務超過に陥っているのか」、「債務超過は一時的なものか」、「債務超過を解消する具体的な改善案があるのか」などの詳細について、事業計画に書いていく必要があります。また、金融機関からつなぎの融資を受けるなど、資金調達の目途が立っている理由も説得力があるように書かなければなりません。
一方、現預金が潤沢にあって金融機関からの借入が必要ない企業、もしくは代表者からの借入で賄える企業も採択されない恐れがあります。補助金は資金力がない企業を支援するために設けられたものです。そのため、既に十分な資金力がある企業は、「支援する必要がない」と判断されます。
少額の補助金であれば、「自己資金ですべて賄う」ということでも問題ありません。しかし、補助額が1千万円以上もある大型の補助金の場合は、仮に自己資金が潤沢であっても借入で適度に賄っていく方が、印象がよくなります。その場合、「資金が潤沢にあるのに、なぜ金融機関から融資を受けるのか」、「どの機関から資金を調達し、その調達した資金をどのような経費に使うのか」などを具体的に書いていくことになります。また、あまりにも内部留保が多い場合、その理由を詳細に書くようにすると説得力が上がります。
官庁や自治体が補助金を設ける目的の一つに、「金融機関に貸出先を供給する」という面があります。補助金を使う企業への貸出を金融機関が積極的に行うことで、補助金及び融資により十分な資金を得た企業の投資も活発になり、経済が活性化するという流れです。つまり、「つなぎの資金確保のために金融機関からの融資に頼る」という建付けを事業計画に明記すれば、その分審査員の評価も高くなることになります。
最近、「金融機関と連携していること」を要件とする補助金が増えてきています。たとえば、中小企業の新規事業に係る設備投資を支援する「事業再構築補助金」では、「事業計画書を金融機関等(銀行、信金、ファンド等)と策定し、その確認を受けていること」が条件となっています。
補助金は原則後払いです。補助金を申請する際は、申請予定の事業に必要な資金をきちんと確保できるか事前に確認することをおすすめします。
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