
2019年4月の働き方改革諸法令の施行に合わせて、厚生労働省の助成金の不正受給も厳罰化されました。
背景としては、安易に助成金申請を促す悪質業者が非常に多かったことが考えられます。そのような悪質業者は「すぐに簡単に助成金がもらえますよ」という甘言のファクスやメルマガを大量に送りつけ、いざ申請段階となると、ろくにお客様にヒアリングもせず、単にひな形に社名を記載するだけの簡単なものを申請書として提出するというケースがあったそうです。
現在、多くの企業が働き方改革に取り組んでおり、今後は働き方改革に関する助成金申請の数も増加することが予想されます。そのため、企業が安易に申請して不正受給するケースをなるべく減少させたいという厚生労働省の思惑があるのでしょう。
助成金の厳罰化の内容は、主に(1)不正受給額の20%相当の納付金を支払う(2)助成金不支給期間の延長と不支給対象者の拡大(3)関与した社会保険労務士も厳罰対象――の3点となります。
今回は、この3点について解説します。
(1)不正受給額の20%相当の納付金を支払う
今までは助成金の不正受給が発覚した場合、その元本と延滞金のみ支払うことになっていました。しかし、今回からは不正受給額の20%に相当する納付金も追加で支払うことになりました。
実例として、大阪のある企業では、既に正社員であった者を非正規から正社員転換したと虚偽申請してキャリアアップ助成金を240万円不正受給しました。この場合、支払わなければならない金額は、元本240万円+延滞金+納付金240万円×20%=288万円以上になると考えられます。
不正受給した金額が大きいほど納付金も大きくなります。
(2)助成金不支給期間の延長と不支給対象者の拡大
今までは不正受給が発覚した企業に対して、3年間助成金を支給しないことになっていました。
しかし、今度はその期間が5年間に延長されます。不正受給した助成金はもちろん、その他の助成金も当然支給されないため、雇用や職場環境の改善にかかる費用がその分増加することになります。
また、不正受給に関与した企業の役員等が他の企業でも役員等となっている場合、その企業も5年間助成金が支給されないことになります。つまり、社長が別企業の取締役として不正受給に関与した場合、助成金を申請できなくなります。
複数企業で役員となっている方は不正受給に関与した企業以外にも多大な迷惑をかけることになるため、注意が必要です。
(3)関与した社会保険労務士も厳罰対象
今までは不正受給した助成金の返還はその会社のみ行うことになっていました。
しかし、今回からは不正に関与した社会保険労務士及び代理人、職業訓練実施者も連帯債務者として返還請求されることになりました。
また、その不正受給に関与した社会保険労務士は公表されて信用が失墜するだけでなく、5年間助成金申請ができなくなります。このようなリスクを恐れて助成金関連業務を避ける社会保険労務士が増加することが予想されます。
不正受給はハイリスク
助成金は元をたどれば国民の税金であり、本来の目的は労務の改善を会社に促すことです。厚生労働省からすれば、何もやらずにお金だけもらおうとする企業に対して助成金を支給する義理はありません。
また、不正受給が発覚すれば、受給額以上の金額を支払うだけでなく、労働局に公表されるため社会的評価も失墜してしまいます。
そして最悪の場合、刑事罰を受ける恐れもあります。
そのことを考えれば、不正受給することがどれほどハイリスクか理解できるはずです。
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株式会社ナビット(https://www.navit-j.com/)
東京都千代田区。「地下鉄乗り換え便利マップ」などを展開するコンテンツプロバイダー。地域特派員5万8100人の全国の主婦ネットワークにより、地域密着型の情報収集を得意とする。
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