建築研究所の木内望博士(工学)らは、既存マンションの浸水経路の確認・検討および対策改修費用を研究したところ、改修しない場合の想定修復費用から対策改修費用を差し引いた効果が数千万円規模になることがわかった。
木内博士は2020年6月に国土交通省が公表した「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」の策定メンバーの一人。今回、浸水のレベルや、実存する標準的な既存マンションの設備・駐車場などの状況やデータ、立地などを基に、指針には含まれていないコストを検討・分析した。
分譲マンションの長期修繕計画には、集中豪雨などによる浸水対策工事は含まれていないケースがほとんどで、そもそも修繕積立金が不足していることも散見され、浸水対策工事にむけた合意形成は困難であることが想定される。
だが研究結果により、事前の対策によって経済的なメリットがあることがわかった。
今回、マンション改修工事を手掛けている設計事務所の協力を得て、デベロッパーや管理組合などにヒアリングや現地調査を実施した。
その上で、実際に都心や駅周辺にある既存マンション53件と郊外に立地する51件の状況を確認し、架空のモデルを設定。都心・駅近マンションのモデルは、商業地域に立地する14階・地下1階建てで、1階には小規模商業施設が入る複合用途型をモデルとする。
給排水設備と電気設備は地下1階に設置されており、屋内に地下ピットを含む機械式駐車場ももつ。1階床レベルはグラウンドレベル(GL)から20センチ、住戸数65戸、延床面積約6900平方メートルだ。