中小企業庁から通年で公募されている「ものづくり補助金」ですが、2021年度は低感染リスクビジネス枠が登場したり、対象者の要件が変更するなど、細かい変更点があります。そこで今回は2021年度のものづくり補助金について解説します。
まず、申請対象者は例年通り中小企業と小規模事業者、および一部の特定非営利活動法人となります。なお、今年度から新たに「公募開始時点において、直近3年間の各事業年度における課税所得の年平均額15億円を超える中小企業等は対象外」との要件も加わりました。コロナ禍でも売上が大きい中小企業や小規模事業者は、今回は対象外になりました。
ものづくり補助金は2つの型と2つの枠に分かれています。「型」については(1)一般型と(2)グローバル型があります。一般型は革新的な製品やサービス開発を支援するものであり、「地元の農産物を利用したブランド開発」「作業進捗を可視化するための生産管理システム導入」等が対象となります。補助額は上限1千万円、補助率1/2となります。
グローバル型は海外への直接投資や国内のインバウンド市場開拓等、その名の通りグローバル展開を視野に入れた革新的な事業を支援するものであり、補助額は上限3千万円、補助率1/2となります。また、事業実施期間が12ヵ月間であり、一般型の10ヵ月間よりやや長いのも特徴です。
次に「枠」ですが、通常枠と低感染リスク型ビジネス枠があります。通常枠は上述の一般型・グローバル型の取り組みを指しますが、低感染リスク型ビジネス枠は、物理的な対人接触を減らすための革新的な製品・サービス開発を支援します。なお、グローバル型に低感染リスク型ビジネス枠はありません。
低感染リスクビジネス枠で申請すると、補助率は2/3にアップします。また、低感染リスク型ビジネス枠で採択されなくても、通常枠で優先的に採択されることになっています。さらに、広告宣伝・販売促進にかかる経費も補助対象として認められます。
提出書類は主に事業計画書(A4で10ページ程)、賃金引上げ計画の表明書、直近2年間の貸借対照表・損益計算書等です。「賃金引上げ計画」とある通り、補助金の申請者は以下の賃上げ要件を満たす3~5年の事業計画を策定し従業員に周知する必要があります。「事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加」「給与支給総額を年率平均1・5%以上増加」「事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上」です。この要件を計画期間内に満たせない場合、受給した補助額の一部を返還しなければなりません。
補助対象経費は主に設備投資費です。機械装置、工具、ソフトウェア、生産設備等が対象となります。なお、設備投資のうち必ず1つは単価50万円(税抜)以上でなければなりません。また、中古設備を導入する場合、3者以上の事業者から相見積を取得する必要があります。
他には、専門家経費・クラウドサービス利用費・外注費等が対象となります。なお、人件費や土地・建物の取得費用は対象外となります。
審査では主に技術面、事業化面、政策面の3つを軸に申請書が評価されます。
そして審査では加点項目も見られます。加点項目は以下4つがあります。すなわち、成長加点(経営革新計画の取得)、政策加点(創業、または創業後5年以内)、災害等加点(事業継続力強化計画の認定取得)、賃上げ加点(給与支給総額年率平均2%以上増加、かつ地域別最低賃金+60円以上)があります。政策加点と賃上げ加点は達成できる事業者は限られますが、成長加点・災害等加点についてはどの事業者も達成可能なため、補助金申請と併せて経営革新計画・事業継続力強化計画も取得しておきましょう。
今回のものづくり補助金は「15億円超の課税所得の企業は対象外」など、申請要件が若干厳しくなりましたが、その一方で補助率がアップする低感染リスクビジネス枠も登場しており、特にコロナ禍に対応した新事業に対して優先的に採択される仕様になっています。コロナ禍でも果敢に新事業を始めたいという方は是非申請を検討してみてください。
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株式会社ナビット(https://www.navit-j.com/)
東京都千代田区。「地下鉄乗り換え便利マップ」などを展開するコンテンツプロバイダー。地域特派員5万8100人の全国の主婦ネットワークにより、地域密着型の情報収集を得意とする。
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