田畑や山林ではなく、宅地でも「売れる見込みはないが、手放せるものなら手放したい」と考える人が2割近くいるほか、その人たちの半数は費用がかかっても手放したいとまで考えているのだ。そんな問題を新たな住宅需要につなげられる手立てはないだろうか。
住宅金融支援機構の「リ・バース60」は、原則60歳以上の人が利用できるリバースモーゲージ型住宅ローンだ。毎月の支払は利息のみで死亡時に住宅と敷地の売却により一括返済する。物件を売却すれば残債を請求されないノンリコース型もある。
つまり、どうしても相続させなければならない物件でなければ、住み替えや建て替えなど希望の住宅の取得に自由に使える。子どもが離れて住んでいる、独立しているなど、今は相続の意思がないケースが増えているのは前述の調査結果からも明らか。そんな場合はリ・バース60で、過剰な負担なく、60歳を過ぎてからの生活に適した住宅の取得を可能にし、不用意に所有者不明土地を生み出すことをなくすこともできそうだ。
具体的にリ・バース60を活用した事例はどのようなものか。自宅(戸建住宅)が老朽化し、建て替えたいと思っていたA夫婦。年金収入のみで住宅ローンを返済していくのは厳しいと考え、別のリバースモーゲージ商品を検討したものの、建物を評価してもらえず融資額が限られた。そのとき住宅事業者から紹介されたのがリ・バース60だった。A夫婦の子どもはすでに結婚して独立。相続の必要はなかったことからA夫婦は建て替えに踏み切ることができた。
鉄道駅とは離れて位置する住まいから、駅近マンションへと住み替えを希望していたB夫婦は、子どもへの残債負担を心配していたことに加え、万一に備えて預貯金を残しておきたい考えもあった。毎月利息分の支払いだけで済む住宅ローンで、ノンリコース型もあるリ・バース60がB夫婦の希望に合致。希望していた駅近マンションを購入した。
リフォーム、借り換えにも使える。古くなった戸建住宅のリフォームをしたいと考えたCさん。預貯金は少なく、現在も住宅ローンを支払い中だ。新たにローンを組み、その支払いを追加するのでは返済も厳しい。子どもはみな独立しておのおの家を持ち、Cさんが自宅をリフォームしても、相続先をどうすべきかと考えていた。そんなときリ・バース60を住宅事業者から提案された。借り換えとリフォーム資金をまとめられ、Cさんの場合は月々の支払い軽減にもつながっている。
住宅取得のためであれば高い自由度で使えるというのが強み。逆に弱みといえば、市場ではあまり知られていないことだろうか。住宅取得希望者が金融機関に相談して偶然知ることも多いようだが、実際にリ・バース60を使った人の中には、住宅事業者から提案された人も少なくない。60歳以上で、住宅の取得検討している人に有効なツールになるかもしれない。