補助金申請においては、「事業終了後にどのような成果が残るのか」「その成果がどのように発展・拡大していくのか」という点も重要な審査項目です。補助金は単発の成果だけでなく、中長期的に社会や経済へ波及する効果を期待して交付されるものであり、その継続性や発展性を具体的に示すことが、採択に向けた大きな加点要素となります。
今回は、補助金申請時に事業終了後の波及効果と継続性を示す狙いとその効果について紹介します。
まず、「波及効果」とは、事業の成果が直接の対象範囲を超えて、他の企業・地域・産業へと広がっていく影響のことを指します。たとえば、新しい設備導入によって生産性が向上し、その結果として製品の価格競争力が高まれば、販路拡大や輸出増加につながる可能性があります。また、新たな製品やサービスが市場に出ることで、関連業界の需要が喚起され、取引先や地域経済にもプラスの効果を及ぼすことが考えられます。
こうした効果を事業計画書の中で具体的に説明することで、補助金活用の公共性を強くアピールできます。
「継続性」については、事業が補助期間終了後も安定的に運営され、成果を出し続けられる体制や計画があるかどうかを示す必要があります。審査員は「補助金で一時的に成果を出すだけで、終了後は立ち消えになるのではないか」という懸念を持つ場合があります。それに対して、「補助事業終了後は、自社の収益で運営を継続する」「補助金により得たノウハウを他の製品やサービスに展開する」など、長期的な運営方針を明記することが重要です。
たとえば、ITシステムの導入を行う場合、導入直後だけでなく、その後のメンテナンスや機能拡張を自社予算で継続的に行う計画を示すことで、「事業の成果が持続する」という印象を与えられます。また、新規事業の場合は、補助期間終了後の売上予測や利益計画を提示し、経済的に自立できる見通しを数値で裏付けると説得力が増します。
さらに、波及効果と継続性を説明する際、「第三者へのメリット」や「地域社会への貢献」にも言及すれば、より効果的です。
たとえば、「本事業により新たに5人の雇用を創出し、その雇用は事業終了後も維持する見込みである」、「地域の中小企業との取引機会を増やし、地元経済の活性化に寄与する」といった記載は、審査員に強い印象を与えます。また、地域の課題解決や社会的価値創造に直結する場合は、その意義を具体的に記載すると評価が高まりやすくなります。
そのほか、事業終了後の展開を「段階的な成長モデル」として示すのも有効です。補助金事業で得た成果を第一段階とし、その後の拡大計画を第二段階、第三段階と順序立てて説明することで、長期的なビジョンが明確になります。
たとえば、「第一段階で国内市場への新製品投入、第二段階で東南アジア市場への輸出拡大、第三段階でOEM供給によるグローバル展開」といった形です。
重要なのは、波及効果と継続性を「根拠のある形」で示すことです。抽象的な表現だけでは説得力に欠けるため、可能な限り過去の実績、調査データ、業界動向などを引用して裏付ける必要があります。「本事業で開発する製品は、当社が過去3年間で培った製造技術と営業ネットワークを活用できるため、事業終了後も安定的に販売できる見込みです」といった記述は、計画の信頼性を高めます。
事業終了後の波及効果・継続性は、補助金活用の公共性と投資価値を示す重要な指標です。事業計画では、「事業の成果が補助期間終了後も持続すること」と「その成果が自社や地域、業界全体へ広がっていくこと」を、数値や事例を交えて説明することが求められます。これらを丁寧に記載することで、審査員に「この事業は長期的な価値を生む」と感じてもらえる可能性が高まり、採択の可能性も大きく向上します。
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