
自民党総裁選にて高市早苗氏が新総裁に選出されました。今後高市氏を首相とした新政権が成立する見込みです。高市氏は、「積極財政」を掲げており、企業支援から生活者支援まで幅広い分野での財政出動を強化する方針を示しています。物価高やエネルギー価格の上昇、産業構造の転換といった課題が重なる中、今後の経済対策の柱となるのが、法人向け補助金と個人向け給付金です。今回は、それぞれの支援策が今後どのように変化していくのか、その方向性を整理します。
まず法人向け補助金については、「ものづくり補助金」や「新事業進出補助金」に代表されるような中小企業支援策が、引き続き重要な政策手段として位置づけられる見込みです。
「積極財政」がキーワード
政府は積極財政の方針のもと、設備投資や新分野展開、研究開発、生産性向上といった取り組みを後押しする姿勢を示しており、補助制度の総額が拡大する可能性も高いと考えられます。特に、GX(脱炭素化)やDX(デジタル化)、経済安全保障、半導体やAIといった先端分野は重点支援の対象となりやすく、これらと関連性のある事業は高い評価を受ける傾向が強まると考えられます。
一方で、補助金の採択条件は今後より明確かつ戦略的になるとみられます。
事業の収益性や成長性、社会的な波及効果、そして国の政策との整合性などがこれまで以上に重視され、採択件数は絞り込まれる可能性もあります。しかし、採択された場合には1件あたりの補助額が増える、あるいは補助率が高まるといった形で、支援の「質」が向上することが予想されます。つまり、従来のような広く薄い支援から、戦略分野に厚く支援する「選別型補助金」へと移行していくと考えられます。
個人向けも拡充の可能性
次に、個人向け給付金政策についても、「積極財政」に基づき支援策が拡充される可能性があります。従来のような一律の定額給付金は恒常的な制度としては採用されにくいと考えられますが、物価上昇やエネルギー価格の高騰といった生活コストの上昇に対応するための支援は、今後も実施される可能性が高いです。
特に注目されているのが、所得水準や家族構成に応じて支給額を調整する「給付付き税額控除」や「所得制限付き給付金」です。これにより、支援の必要性が高い世帯へ的確に資金を届けることができ、財政の効率性も高まります。
また、電気・ガス料金や燃料費、食料品価格といった生活必需品の価格上昇に対応する「物価対策給付金」も、今後の主要な支援策として活用されると想定されます。さらに、景気が悪化した場合や災害・感染症などの緊急時には、過去の特別定額給付金のような臨時の一律給付が再び実施される可能性もあります。このように、個人向け支援は「平時の選別型支援」と「有事の臨時給付」という二本柱で展開されると考えられます。
高市政権が掲げる「積極財政」は、企業や個人事業主にとって新たな支援機会の拡大につながる可能性が高いです。補助金・給付金の総額は今後も拡大傾向が続くとみられ、重点分野と連動した取り組みを行う企業にとっては、これまで以上に大きなチャンスとなると想定されます。
一方で、支援対象がより明確に「選別」されることも予想されるため、政策の方向性を踏まえた戦略的な事業計画の策定がますます重要になってきます。今後は、国の重点政策や成長分野を的確に読み取り、自社の取り組みと結びつけることが、補助金活用における最大の成功要因になると言えます。
補助金活用では、「どの制度があるか」だけでなく、「政策の方向性とどう結びつけるか」という視点が欠かせません。早い段階から国の重点分野を分析し、計画に反映させる準備を進めておくことが重要です。
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