
2022年度から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられるなど、さまざまな新制度や制度改正が施行されますが、企業関連で最も大きなものとしては、賃上げ促進税制のスタートが挙げられます。この税制は企業が雇用者の給与を増額させた場合、最大40%税額控除されるというものです。労働者の雇用環境改善だけが目的でなく、労働者による消費を増加させ、経済を活性化させることも目的となります。今回はこの賃上げ促進税制について解説します。
この税制の対象となる企業は青色申告書を提出する企業であり、個人事業主から大企業まで含まれます。適用期間は4月1日から24年3月31日までの間に開始する各事業年度です。なお、個人事業主は23年4月1日~24年3月31日が対象となります。
優遇される内容は中小企業か大企業かで異なります。まず中小企業の場合、雇用している全労働者の給与等支給額が前年度比で2・5%以上増加すると、法人税が30%税額控除されます。また、1・5%以上増加した場合は15%の税額控除となります。
上記いずれかの取り組みを行った上で、さらに社員研修にかかった教育訓練費が前年度比10%以上増加した場合、10%の税額控除ができます。中小企業の場合、最大40%の税額控除が可能になります。
中小企業の定義ですが、ものづくり補助金や事業再構築補助金等における定義とは若干異なります。「(1)資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人」または「(2)資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1千人以下の法人」のいずれかを満たす必要があります。
大企業の場合、前事業年度及び適用年度の全ての月分の給与等を支給している労働者について、給与等支給額が前年度比4%以上増加した場合、25%の税額控除がされます。また、3%以上増加であれば15%の税額控除となります。さらに、教育訓練費が前年度比20%以上増加すれば、5%の税額控除が上乗せされます。
大企業は中小企業と違い「全ての労働者」ではなく、「前年度から継続雇用している労働者」のみが対象となるため、単純に労働者を増やすだけでは要件を達成できません。また、賃上げや教育訓練費アップの要件が高めに設定されているにもかかわらず、税額控除の割合が低くなります。
なお、資本金10億円以上かつ従業員数1千人以上の大企業の場合、「従業員への還元や取引先への配慮の方針を公表する」という要件も満たす必要があります。
賃上げ促進税制による最大のメリットは人件費の増加を避けられることです。給料をアップさせた分の最大4割が税額控除されるため、大幅な節税が可能です。さらなる人員増を検討している企業や節税で浮いた分の設備投資を検討している企業にとっては特におすすめです。
また、賃上げ促進税制は教育訓練費にかかる経費も税額控除ができるため、従業員のスキルアップ・キャリアアップにつながる研修を受けさせやすくなるというメリットもあります。
一方、売上げが低く納める法人税も少ない企業にはおすすめしづらいです。法人税の税額控除が少ないため、賃金アップによる負担を軽減することができません。売上が高く法人税を多く納めなければならない時期での制度利用が効果的です。
無理に要件を満たそうとして人件費を増やしすぎたせいで、資金繰りが危うくなり、設備投資に資金を回せなくなる恐れもあります。税額控除だけではなく、賃金アップしても問題なく資金繰りができるかも確認し、中長期的な計画を立てて制度を利用しましょう。
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