【夏季特集2019】ハザードゾーンの居住可に=藤沢市、リスクを住民と共有

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近年、気候変動に伴って自然災害が頻発・激甚化し、人命に関わる大きな被害が発生している。

コンパクトシティ政策を議論している国土交通省の都市計画基本問題小委員会は今年度、災害発生時を想定して「都市居住の安全確保」について議論した。中間とりまとめでは、居住誘導区域から土砂災害特別警戒区域を排除することを強調する一方で、立地適正化計画などと防災対策との連携することも求めた。

いわば地域特性に応じた安全対策を求めたかたち。災害は、地震、河川の氾濫、洪水などさまざまであるほか、居住実態やニーズも地域でまったく異なるからだ。

津波浸水リスクのある地区に多くの住宅を擁する藤沢市の取り組みをみてみよう。

そもそも指針によって居住誘導区域には、「レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域、津波災害特別警戒区域、地滑り防止区域、急傾斜地崩壊危険区域など)」は原則として含めないこととなっている。

しかし、同省が154都市の都市計画の運用状況を調査したところ、居住誘導区域に、土砂災害特別区域を含むところが11都市、災害危険区域が5都市、地滑り防止区域が2都市、急傾斜地崩壊危険区域は18都市あった。

レッドゾーンでは、自己居住用以外の開発許可が原則禁止にも関わらず、だ。レッドゾーンよりは、求められる対策が緩やかな「イエローゾーン等(土砂災害警戒区域、津波災害区域および浸水想定区域、都市洪水想定区域など)」に至っては、土砂災害警戒区域を含むのが53都市、津波浸水想定区域が41都市、浸水想定区域では9割にあたる139都市が含んでいた。

しかし、この状況が発生するのには、レッドゾーンやイエローゾーン等にすでに住宅が存在していることが背景にある。一律に居住誘導区域に含めないとすることは可能なのだろうか。

防災対策先導区域とは

津波浸水想定区域(イエローゾーン等)を独自に「防災対策先導区域」と位置づけているのが、神奈川県藤沢市だ。市の津波浸水想定区域は、およそ2万5千世帯の住宅があるエリア。江の島や、鵠沼、辻堂の海岸から近い、いわゆる湘南エリアにある地域で、もともと居住やセカンドハウスとして歴史も人気もあり、商業施設だけでなく、小学校や中学校も整っている。

ビーチからの風を感じられ、防風のための植栽と住宅が混じる地点も少なくない。これら世帯に対する「居住誘導区域内への誘導という考え方が現実的ではない」と判断した藤沢市は、居住誘導区域には含めないものの、同エリアを防災対策先導区域に指定。事業者や市民と連携して防災・減災対策を重点的に行っていくという。

具体的にこの区域(津波浸水想定区域)では、法で定められた通り、3戸以上(または1千平方メートル以上)の開発を行う事業者は届け出が必要となる。事業者は居住誘導区域外であることを重要事項説明する義務がある。そのルールを活用しようというのが藤沢市だ。開発を行う事業者が居住誘導区域の照会に来た際に、リスクについて詳しく説明。基礎を上げるといった提案も行う。また、避難方法の周知を行って、開発前から災害への意識を持ってもらう。新たな居住者にまで安全意識を高めたうえで、安心して暮らせるようにする考え。

もともとの居住者に対しては、2011年から自治会ごとに「津波避難マップ」を作成・配布したり、町内会で避難訓練を行ったり、さらに民間建築物と津波避難ビル協定を結んだりしている。一人での避難が難しいような避難行動要支援者には、例えば民生委員と情報共有するなど、共助・公助が連携した体制整備も検討していくという。今後は、津波避難路に敷地が接する建築物の耐震診断や耐震改修の支援を検討したり、低層住宅地における津波防災のあり方を議論していく予定。もともとコンパクトシティ・プラス・ネットワークと同じ方向性の都市マスタープランを策定していた藤沢市は、その考えを具現化し始めた。

ハザードエリアを居住誘導区域に含めるには、各々の自治体に理由がある。また、災害の特性によって求められる対策も異なる。計画策定に二の足を踏む自治体もあるが、どのような場合でも、住民が災害時に対応できるようにしておくことは不可欠だ。小委員会では、住民や民間事業者に対する正しい情報提供が積極的に行われることを求めている。これにより一時的に地価が安いといった、短期的なメリットを追求するような無計画な開発を回避できるとしている。

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2018年12月25日 住宅産業新聞社 編集部

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