
設備投資を支援する補助金はおおよそ2パターンの目的に分けることができます。「新規事業」と「生産性向上」です。
前者は新製品や新サービスの開発に必要な設備投資を支援するタイプであり、国の補助金でいうと「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」などが該当します。後者は人手不足解消のための業務効率化、生産量を増やすための生産プロセス改善などに必要な設備投資を支援するタイプであり、国の補助金でいうと「省力化投資補助金」や「IT導入補助金」などが該当します。
生産性向上を支援する補助金は各自治体で公募されており、中には国の補助金より使い勝手がよく、採択されやすいものもあります。今回は神奈川県の「中小企業生産性向上促進事業費補助金」について紹介します。
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「中小企業生産性向上促進事業費補助金」は例年大変人気が高く、県内の多くの事業者が申請しています。2025年度の公募期間は5月1日~8月29日の4ヵ月間あり、1ヵ月程度で終わることが多い他の自治体の補助金と比べると長いのが特長です。
対象事業は補助金の名称にある通り、生産性向上、業務プロセス改善、人手不足の解消に効果がある設備の導入となります。過去の採択事例を見ると、「レーザー溶接機の導入」や「小型ロール機の導入」など製造業の採択者が多いですが、「フォークリフトの導入(建設業)」、「スチームコンベクションオーブンの導入(保育園)」など他の業種でも採択されています。
対象者は「神奈川県内に事業所がある中小企業」です。神奈川県内に事業所がありさえすれば、東京都に本社がある中小企業でも申請できます。ただし、事業自体は神奈川県内で実施する必要があります。「神奈川県内の産業発展」を目的としているためです。また、県内に登記をしておらず、県税も納めていない場合は対象外となります。補助金は県税から出しているためです。
補助額は上限500万円(下限25万円)、補助率1/2(小規模事業者は2/3)になります。対象経費は機械装置費、ITサービス導入費、施設工事費となりますが、そのうちITサービス導入費は上限50万円、施設工事は上限100万円の補助しか下りません。あくまで機械装置の導入をメーン事業としているためです。
「中小企業生産性向上促進事業費補助金」では、他の生産性向上を目的とする補助金と同じく、「生産性が向上した」といえるための目標が設けられています。すなわち、「付加価値額の年率平均1・5%以上増加」及び「給与支給総額の増加」です。
「付加価値額」は「営業利益」と「人件費」と「減価償却費(設備の導入費用を耐用年数に合わせて分割した経費)」の合計額です。つまり、本補助金における「生産性向上」は「設備を導入することで売上をアップして従業員に還元すること」を意味します。
事業計画では、生産性向上を達成するために必要な投資である理由を説明するだけでなく、「その投資を行っても通常の経営に支障をきたさない程度の財務状況か」や「増加した付加価値額を給与にも適切に配分できているか」なども具体的な数値を使って説明しなければなりません。
審査の加点項目には「パートナーシップ構築宣言(発注者の立場で取引先との共存共栄を宣言する取り組み)を実施する」、「事業継続力強化計画(災害などの非常事態でも問題なく事業継続できるための事業計画)の認定を受ける」、「事業承継計画書を作成する」があります。特に「事業継続力強化計画」は比較的容易な項目なので、余力があれば押さえておくことをおすすめします。
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他の自治体でも同じような要件で生産性向上の補助金が出ています。生産性向上を検討している方はお住いの自治体のHPを確認してみましょう。
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