注目の助成金(144)事業計画書作成の注意点

事業再構築補助金の審査では、書類に不備がないことは大前提ですが、事業計画書が審査員を納得させる内容かどうかも肝要です。今回は、事業計画書の審査でも特に重要視される「事業の新規性・独自性」と「つなぎ資金」について解説していきます。
事業再構築補助金で申請する事業は新規事業であることが求められます。「新規事業」とは、「今まで進出したことがない新しい分野への進出」を意味します。つまり「うどん屋がそば屋をやる」ではどちらも飲食店のため、「新規事業=新分野へ進出」とは判断されにくいです。一方、「農家がうどん屋を始める」というのは業種・業態が変更されるため、新規事業と判断されます。「日本料理店が焼き肉屋をやる」「普通自動車整備が大型自動車整備をやる」で採択された事例もありますが、業種・業態が変更されていることが望ましいです。
新規事業だけでは、事業再構築補助金の審査に通らない可能性があります。つまり、対象事業に「独自性」がある必要があります。「独自性」とは「競合他社が少ない」ことです。「農家がうどん屋をやる」というのは確かに新規事業ではありますが、うどん屋は全国各地に存在し、「競合他社が少ない=独自性」とは判断されにくいでしょう。しかし「農家が、自身が育てた地元特産品を小麦に練りこんで、その特産品の香りがするうどんを提供する」という事業はどうでしょう? 競合の可能性が低く、地元産業のPRにもつながるため、評価が高くなります。
このうどん屋の例のように「自社が既に保有する技術を生かせる」という点で考えれば、「独自性がある新規事業」を考案しやすくなります。実例を挙げると、東京都の株式会社ナビットでは、「Sohos-Style」というクラウドソージングサイトを運営していますが、「『Sohos-Style』に登録する全国6万人以上の在宅SOHO会員を活用したアウトバウンドコール事業を新たに始める」という建付けで申請し、採択されています。
革新的な製品・サービス開発を支援するものづくり補助金と異なり、事業再構築補助金では対象事業に独自性があることは必ずしもマストではありません。しかし、同じ「新規事業」でも、「既に同じことをやっている者がいる新規事業」と「まだ誰も手を付けていない新規事業」のどちらが高評価を得られるかは一目瞭然です。事業再構築補助金に限らず、ものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金等の申請ではこうした切り口を探すことがまずは重要になります。
続いて「つなぎ資金の確保」についてですが、審査員は決算書等の提出書類を見て、現状の財務内容や収益力を把握します。もちろん、現事業で法人税をしっかり収めるだけの収益を上げており、金融機関からの借入もすぐにできる企業は問題ありません。しかし赤字が数期連続で続いており債務超過に陥っている企業の場合「新規事業ではなく、本業の立て直しをまずは優先すべき」と判断され、採択が下りない可能性があります。
補助金は原則後払いです。支給されるのは補助事業が終わってからさらに数ヵ月先になります。それまではすべて持ち出しになります。そのため、その間のつなぎ資金をどうするのかということに明確に答えられなくてはなりません。
債務超過の企業では金融機関からの借入が難しいです。その場合は、なぜ現業で債務超過に陥っているのか、一時的なものなのかどうか、改善余地があるのか等を詳細に書いていく必要があります。もちろん、つなぎ融資の資金調達の目途が立っている理由も説得力があるように書かなければなりません。
一方、金融機関からの借入が必要ない場合、もしくは代表者からの借入で賄う場合、どこから資金を調達するのか、その調達するお金はどうやって準備するのかを詳しく書いていくことになります。
補助金が少額の場合は、自己資金ですべて賄うということでも問題ありません。しかし、補助額が1千万円以上である場合は、仮に自己資金が潤沢であっても借入で適度に賄う方が、印象がよくなります。官庁や自治体が補助金を設ける目的の一つに、金融機関に貸出先を供給する面があるためます。
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