コロナ禍による自宅時間の増加が自宅での〝食〟と〝住〟の快適さを求めるエンドユーザーのニーズを高めたことで、住宅設備分野ではコロナ禍にもかかわらず昨秋以降、水回りを中心とするリフォーム需要の堅調さが続いている。この〝自宅時間の増加〟を背景とした家庭の〝食〟と〝住〟を支えるシステムキッチン・システムバスの存在感の高まりは、機能やデザインといった各社の製品のアピールポイントが、より実感を持ってエンドユーザーに理解される環境をもたらしたと言っても過言ではないだろう。困りごとの解決、快適で豊かな自宅時間への寄与として、家庭におけるシステムキッチン・システムバスの重要性が増している。
「コロナで休館としていたショールームの運営を再開した当初は、システムキッチンについてはレンジフードやビルトインコンロ、システムバスに関しては浴槽の『ふた』といった全体の一部の取り換え需要が目立っていたが、秋口以降は、システムキッチン・システムバスの本体そのものの取り換え需要が動き始めた」。
首都圏のショールーム運営を任されている、ある大手住設メーカーの担当者は、そう話す。
「お客様なのであまり深い理由を聞くことはできないが、なぜ部分リフォームに加えて本体の取り換えリフォーム需要が比較的に堅調となったのかは、自宅時間が増えて既設品の使用頻度が上がったことで、『どうせこれからも長く使い続けるのだから、もっと良いものにしたい』との思いになられた方が増えたからではないか」「コロナ禍で旅行や外出が思うようにできないため、従来はそうした部分に使っていたお金を、自宅で快適に過ごすために回すという傾向も出ているのかもしれない」。
この住設メーカーでは現在、ショールームの来館を予約制として予約無しのフリー来場者を受け付けていないため、ショールームの来場人数はコロナ禍前より落ち込んでいる。しかし「買い替えることを前提に目的を持って来館して下さるお客様の比率が高まった」(前述の大手住設メーカーの担当者)ため、見積りの獲得といった面ではコロナ禍前よりショールームの営業効率が上がったという。
「コロナ禍の行方が今後どうなるかわからず正直いって不安はあるが、コロナ禍にもかかわらず、わざわざショールームにお越しくださるお客様の気持ちに、しっかりと応えていきたいと思っている」(同)。
新型コロナウイルスの感染拡大で始まった自宅時間の増加が、国の想定より伸び悩んでいるリフォーム市場の規模拡大に対しプラスに働くとの見方は、大手住設メーカーの経営トップの間で、ほぼ共通した見解となっている。自宅時間の増加で自宅の既設住宅設備に向き合う時間が増え、「より便利に、より快適に」といったニーズ喚起のきっかけになった、との考えからだ。
これまで住宅業界では、住宅設備はともすれば〝住宅を構成する一部〟とサブ的な位置付けにされることが少なくなかった。しかしコロナ禍による自宅時間の増加はエンドユーザーに、自宅暮らしの快適さが日々使用する住設機器の良し悪しにも左右されることを、改めて気付かせたといえる。購入した製品に満足し、もっと自宅を快適にしようと満足した製品を供給しているメーカーの品をさらに購入する――。全メーカーが目指す「自社のファンとなったエンドユーザーを増やす」好機は、まさに今だ。
システムキッチン・システムバスの新製品投入に当たって各住設メーカーが力を入れているのは、美しさを兼ね備えた機能・性能・清掃性の充実だ。
このためシステムキッチンは機能・性能面に加え、LDKに設えられた高級家具と同じ視界に入っても違和感を覚えないようなデザイン設計がトレンドとなっており、この傾向はシステムキッチンを構成するビルトインコンロや収納などにも当てはまる。
ビルトインコンロではオート調理機能の充実と並行して、天板やフロントの素材・カラーに高級感をより演出するものが採用される傾向にある。収納についても、システムキッチンとして備える機能・性能・デザインを高い次元で実現させるための工夫が盛り込まれている。
システムバスでは、浴室環境で必須となる汚れにくさや耐久性の高さをベースとしつつ、視界に入る面積が最も大きい壁面のデザイン性向上を図った製品が市場に投入されている。また、施工事業者にとっては今後ますます進むであろう職人不足への対応として、施工性の高さも大切だ。エンドユーザーに加えて施工業者にもメリットがある製品の採用は、双方に喜ばれることになるだろう。